第六話 悲劇~12月11日~
今日はヴェルナも楽しみにしていた盛大なパーティーが王宮で開催される。
「わあ、どれも美味しそう! 」
「そうだな」
王宮にはお父様公認のコックがいるため、料理は美味しい。
近くでウェルズ伯爵が大声で笑っていた。彼も長々とした挨拶は聞く気がないらしい。
「さて、食べるか」
「お兄様、私も……」
ひとつまみ、たったひとつまみのパンを食べた。その後、とてつもない吐き気に襲われた。
「これは劇薬? 」
「まさか、そんな」
「ウェルズ伯爵! 」
「お兄様! 」
薄れゆく意識の中、ヴェルナたちは必死に叫んでいた。
目が覚めると、側にはヴェルナがいた。涙で顔がくしゃくしゃになっている。
「よかったわ……」
「何だ、あれは……」
「先ほど、説明に来られた方曰く、フィなんとかと」
フィリニア。とても手に入りやすい劇薬だ。量によるが、睡眠薬にもなる。一度に大量に摂取すれば死に至ることもあるが、致死性は50パーセント程。
とお父様は昔言っていた。確か、ええと。
「それって伯母さんが殺された時に使用された劇薬じゃないか」
「え? 」
「リハイデ伯母さんはリュメヒ家の色んなもつれにより殺されたらしい」
「そう、なの」
お父様がやってきた。あの日以来疎遠になっていたが……。
「ヴェルナが死ななくて良かった。リュメヒ家に怒られるところだった……」
「お父様」
「ウェルズ伯爵が殺された。これから何が起こるか分からないから、リハイデはヴェルナを守るように」
「分かりました」
ヴェルナは凄い心配そうな顔をした。ぽんぽんと頭をなでてあげた。




