第三話 お茶会~11月1日~
「魔女伝説、か……」
帰宅したけれども、お兄様がいなかった。だから本を読みあさることにした。いい本は写生しよう。
『帝国は黒魔女を異端とみなし、次々と処刑していった。しかし、彼らは知らなかったのだ。本当の恐ろしさを』
「これ、写生しようかな」
お兄様が戻ってくるまでの暇つぶし。とにかく写生した。幸いにも、紙は私がいない間に補充されていた。
「悪魔? 」
途中、変な紙切れが挟まっていた。何かな。
「あー、やっと出れたわ」
「誰!? 」
「あたしね、ええと、……忘れちゃったわ。今思い出すから」
見るからに悪魔なその人はうんうん唸りだした。怪しそうには見えないけど……。
「そう、ヴェルだわ! よろしくね」
「え、あ、はい」
「ヴェルナ様~! どこにいるのですか~」
「そろそろお茶の時間だわ」
「え、そう。じゃああたしも」
しかし、今日はリルシェが来ていた。
リルシェはト・モル公爵の娘。私みたいに縛られた生活ではなく、自由奔放な生活。そして、私をいじめるのが趣味。
「相変わらずねえ、ハーソン様と会ったというのに」
「リルシェはハーソンが好きなわけ? 」
「んー、顔は好きだけれども、結婚するならやっぱり王族よ」
「まさか跡継ぎと結婚する気? 」
「当たり前じゃない。ヴェルナは本当に欲がないのね」
リルシェはほほえんだ。公爵家の娘はリュメヒ家か王家に嫁ぐのが夢らしい。私は別にそんな地位はいらない。
「でも、リュメヒ家もいいなあ、って思うわ。いくら私の家が王家の近くにいれてもサポートだけだし」
「そういえばそうだね」
「ではそろそろ」
リルシェは内心焦っているのかもしれない。王家が跡継ぎを未だに一人もつくっていないことに。




