第二十話 海の国
大人気作家の日記発見!!
先日、86歳で亡くなった大人気作家・ヴェルナ=カーン。彼女の日記が自宅から32冊、別荘から25冊発見された。しかし、何者かが手をつけたあとが見られ一部が塗りつぶされたり破かれたりしていた。それ以外を除けばとても綺麗で彼女の生い立ちを知ることが出来る。明日から記念館で展示される。
新聞を読み、はあ、と私はため息をついた。私の方が2つも年上なのに彼女が先に逝ってしまった。運命とはとても残酷だ。
ヴェルナが亡くなったことはすぐにリュメヒ国に知れ渡った。そしてあの国の国王と女王が私のところへやってきた。
──ツィイーお母様からのご命令です。日記を渡してください。
25冊ものの幼い頃のあどけない日記を手に言われたらたまったもんじゃない。一応渡したら──返ってきた時にはリュメヒ国に都合の悪いことが書かれたページが破かれたりしていた。恐ろしい奴らだ。
偽りの説明をするのは苦しかった。ヴェルナが日記を書いていたのは知っていたし、絵も見たことがある。
「お父さーん! お客さん来たから早く料理作ってよ」
「あ、ああ」
娘のナデアにはまだ話せていないことがある。話すべきだろうか。その決断は早くしなければならないだろう。




