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華やかな蝶の様に  作者: 神崎美柚
第五章 華が、チル~ヴェルナ視点~
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第十六話 カーン家の末路~2月2日~

 あたしは夜中に抜け出した二人を監視し続けた。確かに大金を持っているけれども、これからどうするのかしら。あちこちを放浪?フフッ、お似合いかもね。


「ヴェルナ、これからは私が働く」

「お兄様、それなら私が写本の仕事をしたいわ」

「……それじゃあヴェルナは本を書くといいよ」

「やったあ! 」


 ……幸せそうだからま、いいか。あたしは更に任務があるし。

 あたしの家はあんのクソ伯爵が潰した。お父さんたちはピンピンしている。そして、あたしにこう告げたのだ。

 ──カーン家を滅ぼせ。お前が嫁入りし、乗っ取るのだ。

 まあ、もうその肝心の息子が家を出ちゃったけど、お父さんたちと一緒にカーン家を名乗ればいい話。


「ただいま」

「ヴェルナたち、いたか? 」

「ん、いなかったわ。遠くに行ったんじゃない? 」

「そうか……」


 屋敷に戻り、あたしは彼に話す。嘘偽りのことを。

 この屋敷だってクソ伯爵がカーン家にプレゼントした元我が家だ。取り戻さないと。


「さ、朝ご飯食べましょ。今日は手料理作ってあげる」

「王宮暮らしで覚えたのか? 」

「ええ、まあね」


 睡眠薬で眠らせ、森にある塔に彼を押し込めば任務完了。お父さんたちを連れてこれる。


「フフッ」


 朝ご飯を作り終え、彼は美味しそうに食べる。そして、倒れる。


「ミーナ、いるんでしょ」

「……よく分かったわね」

「ほら運んでよ。リュメヒ家の塔に」

「分かったわよ。マークたち、大喜びね」


 リュメヒ家には拷問係というのがいる。普段はマークたちのそばを警護しているが、本当は敵対する奴をとにかく捕らえ、拷問するのが仕事。

 今は確かはむかったどこぞやの元貴族が拷問を受けているはず。


「これからあなたはこのカーン家を名乗るわけ? 」

「ええ、もちろんよ」

「それなら、ええとフェリクスだっけ? 」

「フォルツェ家と立場交換してくれるの? 」

「あんなのが四大貴族にいられたら困るわ。ツィイーやマークに言っておくから」


 ミーナはそれを告げると、立ち去った。

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