第十六話 カーン家の末路~2月2日~
あたしは夜中に抜け出した二人を監視し続けた。確かに大金を持っているけれども、これからどうするのかしら。あちこちを放浪?フフッ、お似合いかもね。
「ヴェルナ、これからは私が働く」
「お兄様、それなら私が写本の仕事をしたいわ」
「……それじゃあヴェルナは本を書くといいよ」
「やったあ! 」
……幸せそうだからま、いいか。あたしは更に任務があるし。
あたしの家はあんのクソ伯爵が潰した。お父さんたちはピンピンしている。そして、あたしにこう告げたのだ。
──カーン家を滅ぼせ。お前が嫁入りし、乗っ取るのだ。
まあ、もうその肝心の息子が家を出ちゃったけど、お父さんたちと一緒にカーン家を名乗ればいい話。
「ただいま」
「ヴェルナたち、いたか? 」
「ん、いなかったわ。遠くに行ったんじゃない? 」
「そうか……」
屋敷に戻り、あたしは彼に話す。嘘偽りのことを。
この屋敷だってクソ伯爵がカーン家にプレゼントした元我が家だ。取り戻さないと。
「さ、朝ご飯食べましょ。今日は手料理作ってあげる」
「王宮暮らしで覚えたのか? 」
「ええ、まあね」
睡眠薬で眠らせ、森にある塔に彼を押し込めば任務完了。お父さんたちを連れてこれる。
「フフッ」
朝ご飯を作り終え、彼は美味しそうに食べる。そして、倒れる。
「ミーナ、いるんでしょ」
「……よく分かったわね」
「ほら運んでよ。リュメヒ家の塔に」
「分かったわよ。マークたち、大喜びね」
リュメヒ家には拷問係というのがいる。普段はマークたちのそばを警護しているが、本当は敵対する奴をとにかく捕らえ、拷問するのが仕事。
今は確かはむかったどこぞやの元貴族が拷問を受けているはず。
「これからあなたはこのカーン家を名乗るわけ? 」
「ええ、もちろんよ」
「それなら、ええとフェリクスだっけ? 」
「フォルツェ家と立場交換してくれるの? 」
「あんなのが四大貴族にいられたら困るわ。ツィイーやマークに言っておくから」
ミーナはそれを告げると、立ち去った。




