第10話 苦悩~1月6日~
私は昔から思いこみが激しすぎると父に怒られていた。ツィイーに対していつもケンカ口調になるのもツィイーがフェリクス家の血を半分持っているから絶対合わないと思い込んでいるからだろう。
──あなたには興味ありません!
3日前言われた一言。私は彼女を独占しようとした。リュメヒ家を継ぐのに相応しい女性だから大人しくて可憐なのだろう、といつものように思いこんでいた。
しかし、私の母もじゃじゃ馬娘でちっとも大人しくなかったらしい。やはり遠い親戚でも似ているのだろうか。
「ハーソン、入るぞ」
「ハーソン、入るわよ」
心配でもしたのだろうか。父とツィイーがやってきた。
「お前がリュメヒ家にいる資格などない」
「残念だけど私が継がせてもらうわ」
「どういうことだ」
口元を歪め、ツィイーは私の頭を掴んだ。
「このバカめ、たった一言でこれほど落ちこぼれるなんて。ご愁傷様」
「……」
「お前が毎日睡眠薬を飲んでいるのはツィイーも私も家人全員知っている」
ツィイーが突然頭から手を離した。私はベッドに倒れ込む。
「まるでリハイデの様だな」
「お母様? 」
「彼女がどの様に亡くなったか知らないでしょう? フフッ、まああなたには死んでもらわないとね」
ツィイーは小瓶を取り出した。小瓶には──サルサチデ(※劇薬)と書いてあった。
「今すぐ死ねとは言わないわ。この劇薬はねえ、徐々に効いていくものなの。61年には死んでほしいから今すぐ飲ませたりはしないけれど」
「……」
「この部屋から出られないように鍵をかけよう。さ、もう行くぞ」
リュメヒ家の中で一番権限を持つ父に言われたのなら死ぬしかない。私は、1年後に死ぬ運命なのだ。




