1/21
始まりの日~59年10月25日~
私は外の世界を知らない。両親の意見で、14になるまで、でれない。
「ヴェルナ、ただいま」
「おにーさま! 」
「お、今日も美味しそうな香りがするなあ」
「あのね、今日は塩焼きなの! おにーさまのだいすきなレムアの! 」
「お! よし、一緒に食べような」
「うん! 」
おにーさまはよく外の世界のお話をしてくれる。おにーさまのお話はとても面白くてわくわくする。
「そういえばもうすぐ外の世界に出れるな」
「うん、とっても楽しみなの」
「おう、だがなあ、もう少し言葉づかいを」
「おにーさま、明日、どうなるのかなあ」
「ん、ああ、誕生日だもんな」
許嫁の人はとてもすてきなひとらしい。どんな人かはまだわからない。
「木苺のムースだな、美味しいなあ」
「えへへ、私の手作りなの」
「ほう、なるほど」
おにーさまが撫で撫でしてくれた。不安はとれた。




