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1京のスキルを持つ僕の世界  作者: Red_stone
いちご誕生
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第5話 おべんきょう

「いちごちゃん、つくづく立派に成って......」

「おいおい。やめてくれよ、たんぽぽちゃん。その言い方だと、まるで僕が成人したみたいじゃないか」


ちなみにこの国での成人年齢は女子で14、男子で16だ。

僕の年は全然それに届いちゃいない。

というか、一日も欠かさず会っているのに何を言っているのか。

そんなことは、久しぶりに会った相手に言うものだろうに。


「でも、数年前からは予想もできないほどの変わりようじゃないですか?」

「数年前って。僕は今5才だぜ? 数年前だったら生まれた直後か生まれる前じゃないか」


昔の話を持ち出されちゃったよ。

僕って、そんな凄まじい過去とかないんだけど。

残骸院いちご、5才、生まれてから現在まで幽閉されてます、これで終わり。

人生とか語れやしないよ。


「そうですね。でも、お父上から送られた制服がそんなにも似合われて......」

「は、制服ねぇ。たんぽぽちゃんが言うから着てはみたけどさ、別に人民学校へ通うわけじゃないんだぜ? さらに、こんなのが娘にする最初の贈り物なんてのはな――」


歪んだ自尊心が透けて見えるぜ。

きたねぇ思惑もな。

僕は国に唯々諾々と従ってやるような人間じゃあ、ない。


「そんなこと言っちゃダメです。将来はいちごちゃんも立派にお国の役に立たなきゃならないんですから」

「は。僕はそんなものに従うつもりはないね。そんなのはやりたい奴だけでやってろよ」


幽閉されてる人間が国家の役に立ちたいと思うと?

いや、自分で言っておいてなんだけど――普通であれば役に立ちたいと思うね。

僕みたいに散々漫画やラノベを読んでいるならともかく、普通の5才だったら拠り所を求めるだろう。

拠り所を国家にするよう誘導してしまえば、従順な兵士の出来上がりだ。

けど、残念。

僕は普通じゃない。


「こら! いくらいちごちゃんでも、そんなことは言っちゃいけません」

「やれやれ、恐ろしい洗脳だねぇ。たんぽぽちゃんですら、こうまで影響されちまってる。ま、人間ってのは洗脳されずに生きてくことは不可能な生物なんだけど。ま、死んだら治るかな?」


ちなみに君は神様を信じてるかい?

それがもっとも安易な洗脳の一つだね。

ところで、日本人の神様って何だろうな。

仏様? イエス様? それとも八百万、つまり無数にいるのかな?

けど、どれもしっくりこないだろう。


実はしっくりくる意見が一つだけあったんだ。

言ったのは幼女だけどな。

いや、作者は疑う余地もなく大人だけど。

日本人の神様ってのは、世間様だ。

これしかないだろ?

世界的に考えても、世間体というのを病的な程に気にかけるのが日本人だ。

いやあ、ビックリしたね。

幼女にこんな真理を突かれるとは。


ま、ここは洗脳されてない人間はいないということで、締めくくっておこう。




「で、たんぽぽちゃん。僕の制服姿を見て満足したかい? 僕としては、こんな首を絞めるためにあるかのような固い服はさっさと脱いでしまいたいのだけど」

「えー? もうちょっと着ていてくださいよぅ。凛々しくて素敵ですよ?」


その意見には同意するところだけど。

別にスキルを使うこともなく、単に鏡で見ただけだけど中々に愛らしかった。

いろいろポーズをとってしまったのは秘密だぜ。

ま、可愛さではたんぽぽちゃんに譲るけどね。

凛々しさでは僕が上だ。


「いや、もうヤダよ。なんでこんな服を着てなきゃならないんだよ。学園生には心の底からお悔やみ申し上げるね」

「それじゃ、死んじゃってますよ? するなら同情くらいにしておいてください」


「それはそれで、間違っているんだけどね。まあ、いいや。何か疲れちゃったよ。今日のお菓子は何だい?」

「マカロンですよ。でも、その前にお勉強してもらいます」


「へぇ! いいねぇ。何を教えてくれるって言うのかい? たんぽぽちゃん」

「あれ? 思ってた反応と違う......。えっと、読み書きのお勉強です」


「おいおい。おいおいおいおいおい。教えられる前に普通に会話とかできてる僕に、今更何を教えるというんだい?」

「え? もしかして、いちごちゃん.......。つかぬ事をお伺いしますが、読み書きとか、もうできちゃったりなんてことは御座いませんでしょうか?」


恐る恐る、といった感じで聞いてくるたんぽぽちゃん。

こんなんで戦慄されてもね。

滅茶苦茶な敬語を使ってしまうほどに戦慄されてもね。

それも僕に対しておののくのは今回が初めてだというのに。


「はは。何を言ってるんだい? 読み書きは乙女のたしなみじゃあないか」

「絶対にそんなことはないと思いますけど。できない人だって、たくさん居ますよ」


「ふむ。識字率は高くない、と。書けるのは貴族と......誰だい?」

「え? 後は市民と冒険者がちょっと書けるくらいですかね。何故できるんです? 誰も教えてませんよね」


「ふふん。そんなことくらい、生まれたときからできたさ」

「え? 読みはともかく、書きまでですか。ちょっと書ける人でさえ貴重なのに。生まれたときから書きをマスターしてる人なんて聞いたことありませんよぅ」


「それは、ほら。才能の違いとか言う奴さ。ま、できるものはしょうがない」

「そうですか。じゃあ、私が教える必要ないじゃないですか」


がっくりと肩を落とすたんぽぽちゃん。

感情の浮き沈みが激しいところもチャームポイントだぜ。


「他のものを教えてくれたらいいじゃないか。お金の価値とか、結構興味はあるんだけどね」

「ダメです。いちごちゃんはそんな俗物的なことを知ってはいけないのです。現世の穢れからいちごちゃんを守るのは、このたんぽぽしかいないのです!」


僕はため息をつく。


「いいよ。教えてくれなくても。もう諦めてるさ。たんぽぽちゃんは意外と頑固だね」

「ふふん。子供のころに石頭のたんぽぽと呼ばれていたことは伊達ではないのです」


今度は胸を張る。

ころころと、よく表情を変えるね。


「できれば伊達であって欲しかったところだね。可愛くないし」

「えーと。確かにまぁ、優美さには欠けますねぇ」


「だろう? なんか野暮ったいよ」

「野暮って何ですか?」


こくり、と首をかしげる。

僕は肩をすくめて見せる。


「田舎くさいという意味さ。洗練されていない、言ってしまえば馬鹿っぽい」

「あぅぅ。仕方ないじゃないですか。今考えたんですから」


「やっぱりね。もうちょっとネーミングセンスを磨いたほうがいいよ」

「うう。いちごちゃんに言われるとへこむなぁ」


「それはどういう意味かな?」

「あはは。なんでもないですよ。少し早いけど、お茶の時間にしましょうか」


睨むと、すぐに引き下がった。

引き下がっただけでなく、すぐに話をそらした。


「......わーい。なんて騙されればいいのかい?」

「ええーと。お茶の準備してくるから待っててねー」


逃げられてしまった。

まあ、いいや。

けど、失礼しちゃうぜ。

僕のネーミングセンスは十全だというのに。

いちごちゃんの3分教室 第5回『読み書き』

僕は生まれる前から読み書きを知っていただろう?

実はそれって普通なんだ。

程度の差こそあれ、読みくらいは誰でも生まれた時からできる。

――視力があれば、の話だけど。

ま、殆どの人は書きは習わなきゃ出来ない。

だから読みは出来ても書きは出来ないってのが農民と、冒険者の一部だ。

他にも生まれた時からある知識はあるんだが、大抵はスキルの使い方や名前だが。

ちなみにスキル名や技名は見たら分かる。

何故かは知らないけど、閃いてしまうんだ。

これが不利に働くかって言うと、どうなんだろうね?

ま、条件は敵も味方も一緒さ。

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