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1京のスキルを持つ僕の世界  作者: Red_stone
人との決別
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第29話 学園生のレベル

さて、昨日は支配剣シロガネと会った後お菓子を食べて回っていたわけだけど。

ああ、パンに生クリームと果物を挟んだ奴が美味しかったな。


まあ、それはともかく。

今日は学園生の競技会本戦だ。

もっとベスト4からは明日に回されるけどね。

明日は僕らも出るよ。

ゲストVS特別クラスの試合が前座としてある。



さて、学園生はどれくらいのレベルかな?

結晶体と戦うために作られた学園の生徒なのだから、そこそこのレベルは期待できるのかな?

ま、無理か。

人間レベルの強さは才能によって決まってしまうしね。

ここの教師が優秀でも劣等でも、そこまで大きな変化はないかな。




「Aクラス『灰色の螺旋』廃坑跡ベージュ。焦日の後に顔を出す色にて、敵を喰らいつくさん!」

「Cクラス相違明コケ、参る!」


あらら、やってるね。

僕から見れば子供のお遊戯だけど。


でも、少し可哀想かな?

クラスはSからDまであって、Aクラスから上にしか異名を名乗ることは許されない。

異名が名乗れなければ、前口上も言えない。


けどね、合戦の前ですら名乗りあいは行われるものというのはちょっとね。

こういう競技会なら良いと思うよ?

決闘みたいな一騎打ちでもね。

それでも多人数で争う戦いにまでそれを持ち込むのはどうかと思うんだよね。

ほら、一番効率が良いのは射程外から殲滅することだし。

わざわざぶつかり合うのもね――。

僕が言うのもどうかと思うけど。




おっと、あまりに暇なんで思考が横道にそれた。

ま、剣をガチャガチャやってるレベルだ。

弱い奴らにはそれなりに見どころのある試合なんだろうけど。

というか、Aクラスのやつは手加減してるな。

もしかして観客がいるから瞬殺が禁じられているのか?

どちらにせよ、学園生のレベルのほどは知れた。


お遊戯会をいつまでも見ている気はないし、帰ろうかな?


「僕は帰るよ。まとめなきゃいけないデータもあるしね。二人は適当に――。ん?」


帰るために足を出口に向けると、黒い男が立っていた。

……へぇ、かっこういいね。

まるで秘密結社のエージェントだよ。


「お帰りですか? 楽しんでいただけなかったようで残念です。失礼ですが、感想を聞かせていただいてもよろしいですかな?」


柔和な顔立ちに優しい笑み。

これほど格好良かったらモテるだろうね。

とはいえ、僕は男に興味ないのだけど。


「ふむ。君は誰かな? 学園の関係者ではあるようだけど」

「ご存じないですか。これでも結晶祭では毎朝挨拶させられているのですけどね」


「ほう。そこそこに偉い立場にはあるようだね。ま、気にすることはない。僕はほとんどの人間の名前など覚えてはいないのだから」

「それはそれで問題があると思いますが? 覚えてもらえていないとのことなので、名乗らせていただきましょう。ここ対結晶体戦略研究学園の研究室長をさせていただいている哀歌鋲ガーネットと申します」


研究者だって?

とてもそうは見えないけど。


「研究室長とは言いましても、研究者連中とお偉いさんの橋渡しをする中間管理職に過ぎませんがね」


僕の怪訝な視線を感じ取ったのか、そう弁明する。

ただ、この揺るぎの無さから見て――。この慇懃無礼さは決して無知からくるのではなく、己の有能さの自覚から来ている。

裏の事情に精通する上の人間だ。


「まあ、君についてはどうでもいいよ。僕が興味を示すのは研究者か異常者で、君は有能な仕事人のようだから」

「これは残念です。しばしのお話にすら付き合ってはもらえないと?」


「いいや? 自らの責務を全力で果たそうとする人間は好きだよ。その人を通して世界に貢献をしたいと思う程度にはね」

「それは光栄です」


この態度はナルシストとも言えるけど、自分の能力に誇りを持つのは好感が持てる。

うん、少しお話に付き合ってやろう。


「で、何が聞きたいのかな? 国の問題に発展しないことなら話してあげよう。あまねく民草のためにね」

「では、率直に伺いましょう。あのAクラスの子供を見てどう思いますか?」


ああ、戦っているアレか。

剣の横薙ぎ、唐竹割り、突きを余裕でしのいでいる。

それでも、観客の目には必死に防いでいるようにみえるのだろうけど。


「率直ね。なら言わせてもらおう。弱すぎる、と。君たちも知ってのとおりだ。現在出現しているのは4面体と6面体のみだが、8面体の存在は君たちもご存知のとおりだ。あのAクラスではそれにすら敵わない――、束になってもね」

「やはり、そうですか。それは上の御方々も危惧するところなのですよ。何か対策をご存知ではありませんか? 例えば、異世界の技術であるとか」


「悪いね、そんなものはないよ。世乖学の研究で異世界の技術が分かることもあるけど、大抵は意味のないものだ。というか、異世界は異世界なんだよ。その技術をこちらに持ち込んで意義があるかといえば、全然無いものばかりだ」

「――というと? 異世界の兵器を再現できたとして、それは役に立たないものであるということですか」


「そういうことだよ。威力が低すぎるんだ。それでいて、超射程に高精度。とんでもないというしか無いね。そんなものがあったら、無敵の防御力を持たなくては安心できない。警備なんて意味が無いんだよ。君の想像なんてはるかに超えるほど離れたところから鋼くらいなら楽に貫通できる」

「そんなものが実在すると? いや、しかし射程だけでは結晶体への対抗手段とは成り得ない」


「そう。そもそもデリケートすぎて再現すら出来ないから、知っても意味が無いんだよね。例えば、1000分の1ミリのネジとか作れる?」

「無理です。何なんですか、それ? 人間業ではありませんよ」


「だから、人間が作っていたわけではないらしいね」

「では、何が? まさか、妖精とでもおっしゃるのですか?」


「いいや。意思を持たない魔法生物のようなものを使役していたらしい。そこら辺はまだよくわからないのだけど」

「そうですか。やはり、再現できないのですね。しかし、正八面体の結晶体に対抗できる手段はご存じないので?」


「そんなもの、“黄金”使いを派遣すれば済む話じゃないか。ああ、君たちの研究している兵器はまだ安定しないのかな?」

「それができないからこそ、お話を聞いているのですよ。しかし、私どもの開発している兵器が連続使用に耐えないということまでご存知だとは」


「そのくらいのことなら知っているさ。けれど、連続使用ね――。よく言うよ」

「なにかおかしなことを言いましたでしょうか?」


相変わらず柔和な笑みだ。

交渉スキルは僕より格上。

それでも、前提条件が違いすぎるのだけど。


「一つ忠告しておこう、研究者連中に教えてやってくれ。結果を求めるには直接対策しようとしても限界がある。そういう時は一つ工程を挟んでみると案外上手く行くものさ」

「ふむ、私にとっては当然のことではありますが。まあ、伝えておきましょう」


「当然? 君は何故人がこれほどまでに失敗を繰り返すのを考えてみたことがあるかな」

「それは――、能力の不足ではないのですか? もしくは状況が成功を許さない時もあるでしょう」


「確かにね。けど、それは失敗ではないよ。失敗するべくして失敗したのは失敗ではない。むしろ、失敗することに成功したとでも言ってあげるべきなのさ。で、失敗の原因というやつはね――」


一度言葉を切って、腕を広げてみせる。

顔には笑みを。


「当然のことが出来ないからさ」


「なるほど、覚えておきましょう」

「君にはわからないかもね。なぜなら、当然のことが当然に出来る人間を有能と呼ぶのだから」


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