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1京のスキルを持つ僕の世界  作者: Red_stone
人との決別
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第21話 人生に意味は無い

「さて、ホームルームには間に合うどころか、既に始まって久しいわけだけど。ま、ゆっくり行こう」

「はい、ゆっくり行きましょう。そんなことを気にしてもしょうがないですしね」


遅刻など気にすることもなくゆっくり行く僕ら。

そこで、一人の人影を見つける。

他に人影はいない。

講堂に集まっているのだろう。

で、こいつは遅刻、と。


「こんにちは。こんなところで何をしているんだい? もう入学式は始まっているよ」

『ああ、入学式ね。特別棟に行けって言われてるんだけど。面倒くさいから迷っているところなんだよ』


「そう、なら存分に迷っていてくれ。僕たちは失礼するよ」

『待ってよ。君たちは人生についてどう考えているのかな? 迷っているのは未知じゃなくて人生なんだというギャグを思いついちゃってね。ちなみに僕は道にも人生にも迷っている』


何をいきなり。

でも、興味が湧いた。

初めから他人の気はしなかったけど、少し意地悪してみようか。


「人生はとても素晴らしいものだ。仲間や友人に囲まれて幸せに暮らす。そして、人類に貢献する。これほど意義のある人生は存在するかね?」


我ながらよくもこれだけ嘘八百の綺麗事がほざけるものだ。

さあ、どう返す?

こういうのは大嫌いだろう?


『何を馬鹿なことを......。人間は無意味に生まれて無関係に生きて無価値に死ぬのに君は人生に意味があるなんて思ってる。大馬鹿者だね!』


言葉とともに杭を投げられる。


『あれ?』


「無駄だよ。どんな効果があるのか知らないけれど、鳳凰の炎で焼きつくされては灰になるしかない」

『僕の『奈落落とし<アビス・イン・ナイトメア>』が効かないなんて!?』


たんぽぽちゃんの能力だけどね。

ただ、弱いスキルを幾つかぶつけてみたけど全て無効化された。

破壊はたんぽぽちゃん、調査は僕ってね。

けれど見ただけで分かるよ、これはとてつもなく禍々しいスキルだ。

この僕ですら慎重にならざるをえない。

けど、警戒する気は起きないんだよね。

何故か。


「ふむ。それが君の意見か。さっきの大嘘は棚に上げるとして、僕の意見はそうだね――。人間なんて知らない。けれど、僕たちや君のような化け物は意味もなく生まれて。関係を求めて。価値なんて求めている暇はないさ」

『君は人と関わりたいと思っているの?』


「思わない。僕は普通というものを嫌悪しているからね。けれど、一番関わりたい人は既にいて、今も一緒にいる。僕の生まれた意味はたんぽぽちゃんと共にあることと言ってもいい」

「いちごちゃん。私もです! 私はいちごちゃんと居られて幸せで、それだけでいいです」


たんぽぽちゃんが我慢できずに会話に加わってきた。

.....頬を染めるとあらぬ誤解を受けるよ?


「ま、僕は欲張りだけどね。実はお兄ちゃんも居るんだ。贅沢だろう? 血のつながらない家族が3人も居る」

「ええ。初めて会ったときはびっくりしました。いちごちゃん以外にも家族がいたなんて」


『羨ましい、かな』


その混沌とした瞳で見つめられる。

気が狂いそうなほどの深淵の奥に羨望の光が見える。

きっと、この子の本当の感情を見つけられるのは僕達だけだね。


「君も来るかい? 姉弟になろう」

「私もあなたが来てくれたら嬉しいです」


けれど、羨ましく思う必要はないんだ。

僕たちは生まれた時から家族で、出会ったからには気兼ねする必要なんてない。


『そう簡単に家族になれるのかな?』


泣きそうになってる。

僕も嬉し泣きしそうなくらい嬉しいよ。

5人目の家族がこんなところにいるなんて思ってなかった。


「簡単? それは違う。僕達は何らかの絆があって、出会った瞬間に家族になっていたんだ。感覚的なものだけど、僕たちは確かに家族だったんだ」

「私達が受け入れ、受け入れられる”もの”は絶対的なんですよ。出会った以上はもう後戻りは効きません」


うん、簡単じゃない。

むしろ絶望的なほど難しい。

生まれた時から決まっていて、後から変えることはどんなに努力しても無駄なのだから。

でも、思えば僕達は家族なんだから、必ず出会う運命だったということかな?

この辺はいくら考えても、妄想の域を出ないか。

.........妄想は好きだけどね。


『でも、姉弟は遠慮させてもらうよ』


あれ?

拒んでも無駄......


『僕の家族になってくれるかい? お姉ちゃんに妹ちゃん』


って、そっち!?

まあ、いいか。

この場だけは妹でいいや。


「「もちろん」」




「ああ、聞き忘れていたけど、君の名前は? 僕は残骸院いちご」

「私は再生絡たんぽぽです」


『へー。可愛い名前だね。僕の名は霊神負クロズミだ』

いちごちゃんの3分教室 第21回『霊神負クロズミ』

この話から僕達の家族の一員になった子だね。

家族といっても、血が繋がっているわけでもない。

言うなれば、感覚――いや、能力かな?

ここらへんは僕にもよくわからない。

なにせ、出会った瞬間に唐突に理解してしまうだけなのだから。

知識も、好き嫌いも関係がない。

まあ、ここらへんは後半で理由が付けられるんじゃないかな?

理由が本人にわからないという点なら、一目惚れと同じだね。

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