第-2話 残酷姫
うふふ。
楽しくなってきたわ。
思えば生まれたときから楽しく思ったことなんてなかった。
それもこれも私のスキル『運命観測―フォーチュン・テラ―』のせい。
このスキルで私は未来を知らされた。
拒否権もなく一方的に。
未来を知った上で行動するのは酷くつまらない。
私にかけられる全ての言葉はもう聞いた。
私が嗅ぐ全ての匂いは既に嗅いだ。
私が味わう全ての味は既に味わった。
私が触る全ての感触は既に触れた。
私が見る全ての光景は既に見た。
こんな人生は、もう嫌だ。
だから私は行動した。
人類が知るはずのない呪文を唱えた。
これで世界が終わる。
そして、いくら私の憎いスキルであろうとも世界の滅びは予測できない。
これからの世界は私にすら予測不可能な世界なのだ!
あがけ、愚民ども!
私のもたらした滅びにおののくがいい!
私はそれを遥かな高みから眺めよう!
そう、私は女王。
全ての肉親を殺し、王を殺した狂気の女王。
そして、誰も傷つけることが叶わぬ絶対者。
魔道王国”オーディン”の『残酷姫』壊死見きおん。
私を殺せるものなら殺して御覧なさい。
そう思った直後には、あなたは八つ裂きになっているでしょうけど。
さあ、哄笑を挙げましょう。
人の苦しみを楽しみましょう。
人々を地獄に落としたのはこの私。
そして、人類が滅ぶ様を見るのもこの私。
余興に奴隷どもに娘の首を捻じ切らせたり、無意味に兵士に特攻を命じたりしていた。
退屈しのぎにはなったけど、それほど面白くもなかった。
けど、これからは違う。
民の悲鳴を、兵士の苦痛を、貴族の屈辱を全身全霊で楽しめる!
苦しめ―
嘆け――
絶望しろ――
その悲哀こそが私を慰める唯一の楽しみ。
哂う。
哂い続ける。
生贄の666人の処女の血に溺れながら。