第二話 その謝罪、エモにつき。2
「……出来た!鈴木さんの『本当の気持ちをしっかり詰め込んでおいたわよ!#涙の交換日記#ずっと一緒」
陽葵が勝ち誇ったように掲げた紙を見て、俺は卒倒しそうになった。鈴木さんもリアクションに困り「あ、あの……」とおずおずと覗き込んでから……固まってしまった。
俺の書いた、あの堅牢な論理と反省に満ちた「謝罪文」は、陽葵によって、もはや友情の域を軽々と超えた「禁断の恋文」へと転生していたのであった。
ねえ、私の大切な貴方へ
あの日、意地悪なことを言っちゃったねえ。あれは貴方の瞳が見つめる世界に、私がいなかったからなの。寂しかったわ。本当は、貴方の好きなものは全部……私だけのものにしたかっただけなの。
もう一度やり直さない?二人の物語まだ、終わらせたくないよ。
#独占欲#エモい謝罪#ずっと親友 (以上)
鈴木 奈美
「……陽葵。お前、『独占欲』ってハッシュタグを謝罪文に入れる奴が何処にいる……」」
「えー?素直でいいじゃん!鈴木さんも、田中さんが本に夢中なのが寂しかったんでしょ?#図書室の独占欲」
「そ、そんな……!私はただ、自分の意見を……」
鈴木さんは顔を真っ赤にして、ノートの残骸を抱えたまま震えている。
だが、陽葵の勢いは止まらない。
「ほら、悩んでいる暇はないよ!田中さんは今頃、図書室で一人泣いてるかもしれないよ?すぐに善くんに打ち出してもらうから、その破れた日記に挟んで届けてきなよ!」
「……陽葵、なんで俺が……」
「文句言わない!プロデューサー陽葵の命令!」
「……え?」
いつの間にか、立場が逆転している俺と陽葵。
……何なんだよ、一体……。
鈴木さんはもはや思考停止したのか、陽葵作の『魔改造レター』を持って部室を飛び出していった。
俺は高速タイピングを終えて、机に突っ伏している。
先日の剛田と鮫島の「悪夢」が蘇る。
「……陽葵、あいつら、親友に戻るどころか、これじゃ図書室で大変なことにならないか?」
「大丈夫だって!言葉は『熱量』が全てなんだよ!……さ、次はどんな依頼が来るかしら?」
俺は心の中で田中さんと鈴木さんにこっそり詫びた。
俺の日本語は、またしても敗北した。静寂の図書館が、『陽葵の魔改造レター』によってどうなるかをただただ、見守るしか出来なかったのだ。




