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代筆部へようこそ  作者: AKIRA


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第一話 その果たし状、エモにつき。3

 ○月○日の放課後の校舎裏。西日が長く伸び、物置の影を不気味に広げている。

まさに、決闘にはおあつらえ向きの舞台だ。しかし……。


(__もう、知らん。俺は知らない。俺が書いたのは『謹白』で終わる果たし状だ。陽葵の魔改造の怪文書は、俺の作品ではない)


俺は一度現実を拒絶し、カバンを掴んで部屋を飛び出した……が、校門を出る寸前で俺の足は止まった。

__放っておけるわけがない。もし、あの手紙のせいで鮫島が激怒し、剛田があの「不意打ちのラブレター」で袋叩きにあったら?剛田に悪気はないのだ。悪いのは全部、この横でスキップしているピンクの破壊神(陽葵)だ。


「……見に行くだけだ。最悪、救急車を呼ばねばならんからな」

「あはは、そうだね。世紀の瞬間だもんね」


結局、俺は陽葵を連れて、校舎裏の物置の陰に潜む事となった。


そこに現れた鮫島 ヒカルは、俺の予想とは全く違う反応を見せていた。名前は、キラキラっぽいが剛田と大して変わらない筋骨隆々の男だ。

怒り狂って鉄パイプを振り回す……かと思いきや、彼は陽葵の「劇物」を大事そうに抱え、嬉しそうにしていたのだ。


「……来たか、鮫島。逃げずに来るとは、いい度胸だ」


剛田は、いつも通りの「喧嘩」のつもりで指を鳴らす。


「お前も、あの手紙を読んだなら……俺の言いたいことは、分かってくれたよな?」


鮫島は、ビクッと肩を跳ねさせた。


「ああ……分かってるさ。あんなにストレートに『二人だけの鼓動を合わせたい』なんて書かれたら、もう逃げる訳にはいかないよな」


(……は?)


物置の陰で、俺は思わず声を漏らしそうになった。


「……そうだ。俺は、お前と『答えを合わせる』ために、ここに来たんだ」


鮫島は叫ぶように言い、剛田に詰め寄った。


「剛田!俺に、お前の想い(パンチ)を……受け止めさせてくれ」

「いい気合いだ……。さあ、来い鮫島ッ!」


剛田は、鮫島が「全力で殴り掛かる許可」を求めていると解釈し、満面の笑みで胸を張った。

そして鮫島は、剛田が「俺の愛を受け止める準備が出来ている」と解釈し、涙目でその懐に飛び込んだ。


ガシィッ‼


鈍い音と共に、二人の巨漢が、校舎裏の静寂の中で「固い握手」を交わした。

正確に書くと、鮫島が剛田の右手を両手で包み込み、そのまま自分の胸元へと引き寄せたのだ。


「……剛田……お前、最高に恰好良いぜ」

「ああ、お前もな……なんだ、手が震えているじゃねえか」


剛田の解釈では、鮫島が剛田の威圧感にビビったのだと思っていた。


「……ッ!剛田、分かってくれるのか……ああ、怖かったさ。でも、お前の『ねぇ』から始まるあの一文で、俺……決心がついたんだ」


俺(結城 善)は物置の壁に頭を打ち付けた。

俺が書いた「拝啓」は、陽葵の魔改造「エモ」というフィルターを通した瞬間、筋肉質な男たちを繋ぐ「運命の絆」という名の特大の誤解へと成り果てたのだ。


「うん__これでいいんだよな?平和だもんな。怪我人……いないもんな」


俺は、自分を納得させるために、誰ともなく呟いた。

暴力沙汰は止まった。二人は仲良くなった。誰も死んではいない。


死んだのは……俺の元文芸部員としての誇りだけだ。


「さ、善くん、次の依頼が待ってるよ。#エモいプロデュ―ス」

「……陽葵。そのハッシュタグ、止めてくんないかな?」


俺の「被害拡大防止活動は」まだ始まったばかりだ。

タイマン(差し向かい)でやるのは昔の喧嘩だったかな?(笑)

お幸せに。

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