第三話 規律という名のリボン
昼休みの放送部。いつもの生徒会が放送する「校則順守のスピーチ」が今日はカップル漫才の放送になってしまった。
神崎 陽葵は顔を真っ赤にしながら、しかし嬉しそうだ。
俺こと結城 善は、もはや突っ込みを入れる気力もなくただ「漫才」という新たな地獄へ向かっている。
善:どうも―ポエマー善です。
陽葵:プロデューサー陽葵です。よろしくお願いしまーす。#エモい二人#運命のノック
善:……ハッシュタグを付けて口で言うな。……えー、今日は生徒会長の氷室さんから「校則をみんなにも分かりやすく、説明して欲しい」と頼まれましてね……。
陽葵:そう!そうなのよ。校則って、実は私と君を繋ぐ『愛のリボン』なんだよね?善くん。
善:……違う、それはタダの『決まり』だ。まずこれな。『登下校時の交通マナー遵守』
陽葵:あ、それ知ってるよ。赤信号で立ち止まると、君と私の心臓がドキドキする……恋のハーフタイムでしょ?
善:違うわっ!車にひかれるかひかれないかの恐ろしい状況だっ!!命を大事にしろッ!
陽葵:えー?でもさ、横断歩道の白い線って五線譜みたいに素敵じゃない?#歩くメロディー。
善:五線譜じゃねえよっ!そこでカップル二人「愛のステップ」なんかで渡ってたら事故るだろっ⁈
陽葵:じゃあ次ね。『校内での授業中のスマホの禁止』
善:おお、これは大事だぞ。
陽葵:これってさ、「スマホじゃなくて、私の瞳をだけを見てって」先生からのエモいメッセージだよね?#オフラインの絆
善:……お前のポジティブさ、怖すぎるだろ!単に「授業に集中しろ」ってだけだ。お前、授業中に俺のこと連写して部室に貼りだすのやめろ!
陽葵:あら、バレた?でも善くんの寝顔は『琥珀色』の中で、最高に輝いていたよ。
善:やかましいわっ!あとはこれだ!『制服の正しい着用』
陽葵:あ、これね、「規律という名の服装で君の純情を守ってね」ってこと?
善:違うっ!単に「シャツの裾を入れろ」って意味だ。剛田なんて気合入れ過ぎて、柔道着で登校しようとして生活指導に止められたんだからな。
陽葵:でもさー、校則って結局みんなが楽しく高校生活できるために作られたんだから__優しさだよね?
善:……まあ、そこだけは同意してやる。
陽葵:えっ、善くん……今、私とシンクロしたよね?#奇跡の瞬間
善:してねえよっ!……もういいわ。
二人:有難うございましたー!
漫才は無事に終わることが出来た。
最初、放送室のモニター越しに氷室会長が般若みたいな顔でこちらを睨んでいたが、後で聞いたところによると、今回の放送は、なかなか好評だったようだ。……代筆部は廃部を免れたのだ。
「今日も面白かったねえ、善くん」
「……俺は、ちっとも面白くねえわ……」
代筆部……はてさて、これからどうなる運命でありましょうか……。
有難うございました。




