第4話『ダンジョン攻略試験』
──自室に到着。
──二日目の学校。
──初めての授業。
──波乱もあった。
ロゼは入浴を済ませ、気になる本を探しながら、今日の疲れをリフレッシュさせていた。
自室に戻って、しばし考えごと。
当然、今日の授業のことだった。
──魔法使いにとって重要な魔法。
それが、一節魔法であること。
ロゼも思い悩んでいる様子。
一節魔法は、まだ習得出来ていない。
ロゼにある、たった一つの武器。
二節魔法──エレメンタル・バースト。
いきなり、過程と基礎をすっとばしている。
そして威力は……考えたくもない。
俺だって、二節魔法なんかみたこともない。
──これだけでは分かる。
二節魔法だけど、きっとそれ以上の威力があるんじゃないかっていう可能性。
ルートは、基礎が大事だという。
だけど……基礎どころの話しじゃない。
ただ一つ。
ロゼは……爆裂魔法しか使えない。
変なアナウンスもスキルツリーがどうとか言ってたっけ。
この先、ロゼの習得出来る魔法は、全て爆裂魔法なのかと思うと、不憫なものはない。
これ以上、威力の高い魔法なんか使ったら世界を滅ぼしてしまうのではないか……。
不安もよぎる。
そして、超えるべき目標。
──破壊の魔術師のこと。
現状、大戦で活躍したとされる、伝説上の偉人みたいなことしか分からない。
ロゼ自身も気になっていた。
入浴を済ませた後、探した本の中に調べたかったとされるド本命の本。
伝説の魔法使い──破壊の魔術師。
なんて厨二なタイトルなのだ。
これを読んだら多少は、この魔術師の素性もしれるはず。
就寝までにロゼは、話しの冒頭までは読み進めていた。
あえなく、眠過ぎたのか、そのまま眠ってしまった。
──そして、早朝を迎える。
「ねむぃ……まだねたぃ〜」
「どうしたよロゼ。早起きさんだな」
「ウルトくんと……約束したもん……」
すぐに本を開き読書を始めた。
ロゼお嬢様よ。
別にウルトとは、本を読む約束なんかしていないはずですよ。
どちらかというと……勝手に読むって言ってしまっただけでは……。
ツッコミを入れるのもヤボだろう。
僕は、ロゼのやる気を尊重せねばならん存在だ。
したいというのなら、温かく見守ることにする。
「……あれ……このページさっき読んだかも……」
眠気は、まだ覚めていないみたいだ。
ウルトは毎朝こんなことをしてるんだろうか。
まさか、貴族の見栄で出まかせを!?
解せぬな小僧め……。
ロゼは本を読んだり、寝たりを繰り返す。
本を読んだぐらいでは、さすがに眠気は覚めぬだろう。
代わりに俺が読んでおくことにした。
異世界の文字だが、なぜかスラスラと読めてしまうのだ。
こういうのも、異世界に転生した特権なんだろうか。
──破壊の魔術師。
十年前に活躍したとされる英雄。
単騎出撃で魔族を約四千を殺戮した。
ロゼが倒したスカルデーモンよりも格上だろう。
それを……この数を一人で……!?
絶対に架空の人物だろ……。
魔王との交戦後、決着が着かず戦争の終焉。
破壊の魔術師は、姿を眩ましたという。
名前すら明かされていないんだとか。
そして、肝心となるこの魔法使いの魔法。
──掌で触れた魔力、魔法を全て打ち砕く。
チートのような魔法だった。
そりゃ、魔族も敵わない訳だ。
触れただけで、魔法が打ち消せるなんてどうかしてるよ。
弱点も多そうだけど……。
戦闘時は、白いスーツとサングラスを着用。
魔族の返り血で真っ赤に染まり上がるんだとか。
魔族側では、紅き鬼と蔑称されている。
紅き鬼を見た者は生きて帰れない。
そんなジンクス紛いな……きっとデマだろう。
うーん。
そんなやつおらん!
やっぱり、架空の人物だろう。
本当にいるのなら、きっと魔族なんて、とうに滅びてるはず。
相変わらず、魔族や魔物は活発に生息しているし、魔王とやらも、今だって健在なんだろう。
──人類が希望を持てる為に作った英雄譚。
そうとしか、俺には感じ取れなかった。
本の内容をある程度理解した頃、ロゼが眠りから完全覚醒した。
眠り姫の寝顔を美しいが、寝起きの顔も、中々に美しい。
やっぱり美少女は、何をしていても可愛いらしいものだ。
「おはよう……ツエさん。本……読んでたの?」
「おはよう麗しいお嬢様。暇だったから読んでたよぉ」
「ずるい……楽しみにしてたのに……」
「授業が終わったらいくらでも読めるよ。さぁ、学校の準備をしようじゃないか」
身支度を済ませる。
これからすぐにルートの授業が入っていた。
どうせ、一節魔法の授業だろう。
まだまだ知りたいことが沢山ある。
今回は、何を教えてくれるのだろうか。
気になって仕方ない。
教室に向い、ロゼはまた、ウルトの席の隣へ着席。
ウルトもまた、呆れ顔。
「しつこいな……俺様には下民と話しをしている暇は無いぞ!?」
「ご……ごめんね。やっぱり忙しいよね……」
「分かったなら、今後は俺様に近づくな」
「違うのウルトくん……」
「何だよ。用件は手短に済ませろ」
「……お礼を……言いたくて……」
「はぁ……!?」
「朝ね、読書してきたよ。けど眠くなったり……しんどかった。だけど……読んだところの内容は、しっかり覚えてるんだ」
「そりゃ……良かったな」
「まだ慣れないけど、慣れるように頑張るね!」
「……習慣になれば、さほども辛くなくなる。情報が大事な世の中だ。慣れておいて損はないさ」
「やっぱり凄いんだねウルトくん!いつも……ありがとう」
ウルトは顔を赤くしてソッポを向いた。
お決まりのパターンか。
この後は、いつも聞き取れんぐらい小さな独り言を呟くのだろう。
「まさか……本当に俺様のアドバイスを聞くなんて……。どれだけ純粋なんだ。ロゼ・スカーレッド……そんなに俺様のことが好きなのか!?」
──始業のチャイムがなる。
今日は、遅れずにルートは教壇に到着していた。
昨日のこともあってか、今日は真剣に授業をするつもりらしい。
どんな授業をするのか……楽しみだ。
「よっしゃー!今日も一節魔法の授業をするぞぉ。では、みなさん……教科書をしまって下さい。そんな教材は必要ありません」
真剣に授業をするつもりは、もうとうなかったらしい。
教材無くしてどう授業するんだバカ教師。
クラス内でまた不信感を募らせていく。
破天荒極まりないな。
「今日の授業は、一節魔法の威力についてです」
「分かっていますわ。魔法の基礎……三節魔法のベースとなるスタンダードな魔法です。それ故に、威力は相当低いのですの」
「残念……魔法の基礎であることは正解だが、それ以外は全て不正解だ」
「な……なんですって!?」
エリエル・ウィンテッドがルートに噛み付くが失敗。
返り討ちにされてしまった。
理解が出来ずに怒り狂っていた。
「別にスタンダードな魔法でもなきゃ、威力が低い訳でもない。まぁ……三節とまでは無理だろうが、二節を張れるポテンシャルはあるんだよ」
「そんな訳ありませんわ。現に一節と二節には明確な差が……」
「それは、完璧に習得出来たらの話しさ。一節魔法を弱くしてるのは君たち魔術師だよ」
「一節魔法を弱くしてるですって……!?」
「一節魔法は、魔術師の……心、精神、思いの力で威力が増幅する。これ、教科書には記載されてないから、ちゃんと覚えておくんだぞ!」
「信じられませんわ!」
「しかも、魔力消費は相変わらず少ない!低燃費だ!」
なかなか良い授業をするじゃないか。
魔力消費を変えずに、威力を上げることが出来るなんて、このクラスの誰も知らなかっただろう。
俺だって驚いてしまった。
授業に文句を言っていたクリア・ディアベルでさえ、拍子抜けした始末。
魔法って奥が深いんだな。
つくづく、そう思う。
「心の力なんてもので……魔法が強くなるなら誰も苦労しませんよ……」
──クリアが呟く。
ルートのことを否定したくても、出来ない自分に葛藤しているようだ。
これまでの、自分の修練を否定されている気分にもなるだろう。
それが、気に食わないし、許せない。
「これから覚えようクリアちゃん。先生が手取り足取り教えちゃうぞ?」
「……必要ありません」
この教師、幼女に振られてやがる。
今日の授業も、凄く為になった。
ロゼの魔法も、思いの力、心の力で威力が増幅したりするのだろうか。
ホント……未知数だな。
今日の授業も終わる。
そして、朝が来る。
また、一節魔法の授業だ。
そのサイクルが一週間を向かえた頃、事件が起きる。
ルートがドシをして起こったことなのか。
ただの嫌がらせか。
こういうことをすると、バッシングを受けると理解が出来ん男らしい。
何があったかは、ルートがいつも通り遅刻して教壇に立った頃に遡る。
「いけなーい!遅刻遅刻!」
「いつも遅刻してるではありませんの!今日はどんな言い訳のするのですか!?」
「えぇ〜、聞きたい?」
「早く喋るのですわ!」
「実はぁ〜、Sクラスの担任に喧嘩を売られちゃってぇ〜」
「前置きが長いですわ!?」
「いや、すげぇ〜どうでも良いんだけど。Bクラスは無能の集団だから、今日の試験はどうせ合格者はゼロだろって煽られた訳よ」
「……ん!?」
「舐めんなよクソメガネ。うちのクラスに無能なんかいない。全員合格するって啖呵切ってきたのさ!」
「ねぇ……クリアさん」
「どうしたんですかエリエルさん」
「このクラスに……無能は確実にいると思いませんでして?」
「えぇ、いるでしょうね。しょうもない無能が一匹ほど……」
「さっきから誰のことを言ってるんだ?先生寂しいぞ?」
「お前だよバカ担任!!!!」
クラス満場一致。
このアホに頭を悩ませられていた。
理由は明確。
つまり、今日がテストであることを伝えられていなかったからだ。
抜き打ちテストとなんら変わりない。
そして、悪質なのがたった今からであると言うことだった。
試験内容すら知らない。
筆記なのか実技なのかも不明。
ルートはアヘアヘと、笑ってごめんと呟くばかり。
そりゃ、みんなから怒られても無理はない。
一体、何をするのらだろうか。
珍しく、ロゼがルートに気になって質問していた。
「今日の試験内容ってなんですか?」
「珍しく……ロゼちゃんか。今日はズバリ、ダンジョン攻略試験でぇーす!」
「すごい……ダンジョン!?」
「凄いだろー!試験用だから規模も小さい!魔物は弱い!きっと一節魔法だけで倒せると思うよ」
間髪入れずに、エリエルが反発する。
「だからって……一人でダンジョンを攻略しようなんて絶対に無理ですわ!」
「そうだろう。だからこのクラスで三人ずつのパーティを組んでもらう。自由にパーティを組んでくれ。ただし、これから名前を呼ばれる三人は返事しろよ」
返事なんて、させる必要があるんだろうか。
何を伝えたいのだろう。
クラスの代表パーティでも決める勢いだった。
ルートが名前を告げる。
──ウルト・ローラン。
──クリア・ディアベル。
──ロゼ・スカーレッド。
ロゼの名前も呼ばれてしまった。
特に共通点なんてさなそうなメンツだ。
ルートは、何を企んでいる。
全く、見当もつかない。
「君たち三人だけは強制パーティです。拒否したら卒業出来なると思ってね!」
「凄いよウルトくん、パーティだよ、仲間だよ。クリアちゃんも頼もしいよ!?」
「よ……よろしくねロゼちゃん」
「よろしくクリアちゃん。一緒にがんばろう。ウルトくんは凄いからすぐ攻略出来ちゃうよ!」
「……どうしてなんだ。どうして俺の周りには、下民たちが着いて回るんだ!」
みんな自由にパーティを組んでいるってのに、これはあんまりだよな。
なんというか……ロゼが不憫でならん。
よりにもよって、こんないけすかんガキと仲間にならねばならんのだ。
不本意だ。
不可思議だ。
ふざけるな。
ロゼには、自分の身を守る手段を持ち合わせてはいない。
最悪の事態を避けるには、こんな頼りない奴を味方にしなきゃならないようで、俺は気が狂いそうだった。
この絶対には、逆らえない。
おとなしく、この理不尽を受け入れるしかなかった。
「おいバカ教師!なんでこんな下民達とパーティを組まなきゃならないんだ。納得いくか!」
「だって君……一人で合格出来ちゃうでしょ。そんなのつまらないよ。何かを背負って戦うっていうのを経験する良い機会だ」
「な……なんだと……!?」
「ちゃんと、ロゼちゃんとクリアちゃんを守るナイトになれよ少年」
「俺に嫌がらせしたいだけだろ!」
「さぁ……どうだかなぁ〜」
落ち込んで座り込むウルトの姿があった。
落ち込みたいのは、俺の方だ。
こんなやつがロゼをちゃんと守れるかね。
クリアに関しては、一貫して無表情。
ロゼはというと、友達と初めてのイベントである、この試験が嬉しくてたまらないってところだ。
上手くいくかねこの試験……。
不安だし、心配だ。
ロゼ、ウルト、クリアと共に試験場に向かう。
到着し、現れたダンジョンの門。
そこでSクラスの担任、ロバート・クリエレスと副校長も待機していた。
──金髪。
──髪は肩まで伸びている。
──メガネのインテリ系の男。
担任としての腕も一流であり、魔術師としても名が通ったエリートなんだとか。
着いてきたルートを激しく睨むロバート。
存在事態が相当気に食わないらしい。
ロバートに一体何をしたんだバカ教師よ……。
ここまで普通嫌われるかね……。
「来ましたね……無能教師!」
「あ、チィ〜ス。どうしたんですかハゲ先生」
「私はハゲとらんわ!貴様の無様な姿を見にきたんだ」
「無様な……姿?」
「どうせお前のクラスは全員脱落するだろう。教師も無能、生徒の無能……。かわいそうな奴らだ」
「……はて、ウチのクラスに無能はいませんけどね。賭けますか?合格者数でウチのクラスとやり合うってのはどうでしょう」
「賭けにならん勝負を吹っ掛けるな。貴様が負けるのは目に見えている」
「そうよバカ先生。相手はSクラスの担任なの。くだらないこと言わないで早く試験を始めるわよ」
「ミレイがそう言うなら分かったよ。確かに相手するだけ無駄だった。どうせ、我らBクラスが勝つのに失敬失敬……」
「舐めた真似をしてくれるルート・ローラン。さっきからなんなんだ。そんなに私と喧嘩がしたいのか?」
「──先に喧嘩売ってきたのはお前だろ、ハゲメガネ」
とんでもなく仲が悪かった。
ロバートってやつも気に食わない。
他はバカにしてくれて構わないが、ロゼをバカにするのは許せない。
こいつもやっぱり貴族なんだろう。
上から目線に腹が立つ。
だが、ロバートは一応、一流教師と名乗るほどはあるらしい。
一応の魔法使いは、三節魔法を複数習得していると聞く。
ロバートの三節魔法習得数は、脅威の六つ。
エリート中のエリートだ。
ルートもそんなエリートに喧嘩を売って、大丈夫なんだろうか。
「ならばその喧嘩……乗ってやろう!」
「そうでなくっちゃ!」
「私がかったらミレイ副校長に金輪際……近づくな!」
「……はい!?」
「ミレイ先生は、お前のような薄汚いやつの隣には相応しくないのだ。相応しいのはこの私だ!」
「そう言っていますよ。ミレイ副校長……物好きもいたものですね!」
「……ルート先生」
「なんですかミレイ先生」
「勝たないと……殺すわよ!」
賭けの対象は、ミレイになったらしい。
ロバートってやつは、まさかミレイ先生が好きなのか?
さすがに好きじゃないと賭けにしないよな。
それだけ言い残してロバート先生は、そそくさと逃げ出した。
学生同士の成績を、大人の色恋の干渉で邪魔をしないで頂きたいバケ先生。
「なんかうるさいが……行くしかないな」
「どんな魔物が出るかも教えられてないのに……」
「大丈夫だよクリアちゃん。ウルトくんもいるし安心だよ!」
ロゼの目がキラキラしていた。
ワクワクし過ぎですよ。
今回だけは、どうにもならん。
ルートが、ウルトは、一人で攻略出来ると言っていたんだ。
簡単なダンジョンなんだろう。
信じてみるしかない。
三人でダンジョンの門を開く。
試験開始だ。
その一歩を踏み込むことにした。
「行っちゃったわね」
「行っちゃったな」
「ルート……あなたわざと、試験を抜き打ちにしたわね。どういうつもりよ」
「魔族がこれから攻めに行きますってわざわざ教えてくれると思うか?」
「……それはそうだけど……」
「これも訓練だよ。大丈夫だ、一節魔法の大切さは教えこんだから」
──初めての魔物。
──初めてのパーティ。
──初めての仲間。
これがロゼにとって、良いものでありますように。
経験はこれからの武器になる。
また一つ、成長出来るのかもしれない。
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