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転生したら最強の杖になっていた。〜魔法学園を追放された才能0の魔術師少女が俺を装備して人生逆転で成り上がる〜  作者: 久方久米


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第1話『杖と少女』


 ──俺は杖である。


 なんでぇー?


 どーしてぇー?


 なんて聞かないでほしい。


 なんとも言えないが、『転生』とやらをしたみたいだ。


 第二の人生が欲しくて、転生した訳でもない。


 俺はごくごく、ありふれた死に方をして今に至るのだ。


 ──自殺。


 ギャンブルに狂い、借金を苦に自害したってのがことの顛末です。


 こんなクズに第二の生。


 生き物で無く残念だ。


 腹も空かない。


 眠くもない。


 時の感覚すらもう分からん。


 俺は、どこか知らん森の地面に突き刺さっているだけだ。


 自分自身が杖であると自認したのは、雨が降った日のこと。


 水たまりに映る俺を見た。


 ファンタジーで強そうな魔法使いが使いそうな……。


 装飾の派手な杖だった。


 その時に初めて、俺は杖なんだと自覚した。


 どんなに頑張っても地面からは動けないし、なんだか、生きる活力っての?


 まるっきり皆無だし、こんなに寂しいのなら死にたいとすら思った。


 まぁ、今回は自殺出来なさそうです。


 自分……動けないので。


 地面に刺さり何年経っただろう。


 何十年経っただろう。


 下手したら数百年か。


 植物が枯れては生えてを繰り返すこと。


 森のどこからか怒号がした。


 この森は、比較的弱そうな魔物のような物しか生息していない。


 こんな暴れ狂う魔物なんて居たっけなとか、心底どうでも良い感情が心に流れてしまった。


 「だれ……誰か助けて下さい!」


 ──女の声がした。


 少女の美声を聞くなんて、何億年振りだろう。


 魔獣の足音とセットで無ければ、なお良かったのだがな。


 音は次第に増していく。


 これは俺も危ないのではと、思ってみるが動けないので逃げようもない。


 そして、とうとう……。


 ドスッと鈍い音がした。


 もしかしたら、女の子は魔物に殺されてしまったのかもしれない。


 この世界は、理不尽にして残酷なんだなと冷めた感情にもなってしまう。


 その刹那、助けを求めた女の子は俺の目前に降ってきた。


 この場合、殴り飛ばされたが正しいのかも知れない。


 骨でも折れたのか、それなりに辛そうだ。


 「しぶといな。だが、もう逃げらんぞ」


 魔物も少女に便乗して姿を現した。


 というか、魔物なんて呼んでいい代物でもなかった。


 俗にいう、デーモン。


 ただのデーモンじゃない。


 RPGでよく見る。


 なんなら終盤手間で出てくるような、絶望感を抱くような上位種ってところが的確だろう。


 ゲームの勇者だってレベルを上げてやっと倒せるっていうのに、小さい少女が逃げ切るには無理ってもんだ。


 絶望の中で、少女と目が合った。


 ような気がした。


 サラサラとした白髪で瞳は紅く染まっている。


 ローブを着た美少女だった。


 もしかしたら、この少女は魔法使いなのかもしれん。


 てか、そうであってくれ。


 興味あり気に俺に近づくが、デーモンがその邪魔をする。


 「これ以上は遊んでやらん。人間は美味いからな。餌にしてくれる!」


 「ヒィ……」


 ──怯んだ少女。


 だが、一瞬だった。


 すぐさま立て直して、その辺で拾った木の棒で応戦する。


 勝てる訳ないだろォォォォ!?


 実は剣士だったりするのだろうか。


 余りのやられっぷりに、その考えは否定された。


 「ゴフッ……」


 なんだかんだで、まだ遊ばれてるらしい。


 デーモンの重めの蹴りが少女の胴体に直撃。


 致命傷になりえるだろう。


 少女のもがき苦しむ姿をみてデーモンが嘲笑った。


 「いい加減諦めたらどうだ。誰も助けになど来ないし、お前はただ孤独に死ぬだけなのだから」


 「しね……ない。まだ……死ねない。私は……世界で一番の魔法使いに……」


 「才能ゼロの魔法使いなんかこの世界の恥だ。生きているのもおこがましい。お前なんか生きる価値がないんだよ」


 ──俺はよそ者です。


 ──部外者です。


 こんな現場に関わる義理も、口を挟む権利も有りはしない。


 だけど……デーモンの言い分にすんげぇー腹が立った。


 自分を否定されてる気分になった。


 確かに生きる価値がない人間もいる。


 俺がそうだったから。


 でもこの少女は違う。


 生きることを諦めないのだ。


 俺は生きるのを諦めた。


 少女には目標があるんだ。


 俺には目標がなかった。


 そんな彼女を否定する、この魔物が憎くて仕方がない。


 また少女と目と目が合う。


 まだ諦めていない。


 俺は……この少女に何が出来る!?


 ──俺は杖。


 ──少女は魔法使い。


 答えは一つだろ。


 ──俺を使え!


 ──俺を掴め!


 ──俺を握れ!


 ──俺と戦え!!


 勝てる保証なんかない。


 それでも、俺は君と共にいたい。


 もう退屈な日々とはおさらばだ。


 お願いだから、殺される前に俺を手に取って欲しい。


 願いが届いたのかは分からん。


 少女は血を吐きながら、地面に這いつくばり、ジリジリと俺に向かってくる。


 届け……届いてくれ……。


 まだ遠い。


 デーモンがもて遊び、少女を殺さぬようカスるように地面を殴る。


 怖いのなんか分かってる。


 同じ立場なら、小便漏らしながら気絶して、呆気なく死ぬ未来が見えるほどだ。


 恐怖で震えるな。


 進め……進んでくれ……。


 「んっ?なんだこの杖!?」


 ──さすがにバレるよな。


 ──この隙だ……全力で走りだせぇぇぇぇ!!


 「ていゃーッッッッ!!」


 「!?まだこんな体力があったのか。変な真似などさせるかぁー!」


 我慢ならないほどの激痛だろう。


 その痛みを抑えて少女は翔ける。


 「届けェェェェ!!!!」


 デーモンの悪ふざけが殺意に変わる。


 今回は本気で殺しにくるらしい。


 負けるな……。


 俺は負け続けてきた人生だったから。


 だから、君はこんな理不尽に負けるんじゃない。


 デーモンの殺気に気づいて少女は、とっさの判断で攻撃を回避。


 そして、ついに少女は俺を手に入れた。


 「やったぁぁぁぁ!!」


 「やったぁぁぁぁ!!」


 なんか喋れた。


 まさか人と会話が出来るようになるなんて。


 俺は杖だし、声帯が無いんだろうって思ったけど、どうやら困難を乗り越えると奇跡が起こるらしい。


 「つ……杖が喋ったぁぁぁぁ!?」


 「ほんと驚かせてごめーん!ってかそんなこと言ってる場合じゃない。構えろ、銀髪美少女!」


 少女が俺を装備して、デーモンが怯んだ。


 杖も持たない、魔法も出してこない、そんな者が急に杖を持ち出したんだ。


 どんな魔法を放つのか警戒もするだろう。


 だけど、それは一瞬の警戒だった。


 たかが、子供の魔法。


 ハッタリをかますのには、不十分だったと言える。


 「いまさら杖なんて持ったところでどうする。我はデーモンの上位種、スカルデーモンだぞ。生半可な魔法など効かないぞ?」


 「えぇ……分かってますよそんなこと」


 しばらく睨み合いが続く。


 痺れを切らして、デーモンが猛攻を仕掛けようとする。


 何でもいい。


 何でもいいから魔法を使って生き残ってくれ!


 それでも、少女は魔法を使おうとはしなかった。


 「おい美少女、攻撃がくるぞ!」


 「そりゃ、そうでしょうね」


 「なんで魔法を使わないんだ!ちゃんと杖ならあるじよないか」


 「私……魔法が使えないんですよ……」


 「な……なんだって〜!?」


 ──誤算中の誤算。


 ──打つて無し。


 これって詰んだのか!?


 混乱している場合じゃない。


 デーモンは、こちらが魔法を使う前提で攻撃を始めている。


 攻撃を受ければ確実の死が待ち受ける。


 この少女だけは……死なせたくない。


 この打つて無しの状況で聞き慣れない機会的なアナウンスが流れる。


 ────ロゼ・スカーレッドは、杖を装備した。


 ────爆裂魔法下級『エレメンタル・バースト』を取得。


 ────スキルツリーを爆裂魔法に変更します。


 頭がカチ割れるほどの音がした。


 少女こと、おそらくロゼだったか。


 急な念話みたいなもので頭を抱えているもよう。


 「落ち着いたか!?」


 「だ…大丈夫です!」


 「魔法を覚えたらしいぞ。今すぐ試そう!」


 「その前に……約束してくれますか?」


 「急に何なのよ!?」


 「……私と一緒に死ねますか……」


 「……いやだね。どっちも生きて帰るぞ!」


 「分かりました。どうなっても知りませんからねぇー!」


 魔法を唱える準備をする。


 デーモンの攻撃が眼前に迫っている。


 この窮地を超えるしかない。


 アナウンスは初級魔法って言ってたけど、デーモンに対抗出来るだろうか。


 ──考えるな。


 ──放つしかない、ありったけを!!


 「よし!全力で……放てェェェェ!!」


 「すぅ……エレメンタル・バァーストォォォォ!!!!」


 魔法を唱えた瞬間、辺り一面は真っ白に光り輝いた。


 眩しいから目が開けられないのか。


 はたまた、デーモンに魔法が効かなくて、無惨にも敗れ、殺されてしまったのか。


 理解が及ぶまでに、ほんの少しだけ時間がかかった。


 ──結論から言おう。


 ──我々は、この戦いに勝利した。


 ただ、勝ったという訳ではない。


 ──光と共に巨大な爆発。


 ──燃え盛る焔。


 ──長い年月を過ごしてきた広大な森は全て消滅した。


 もちろん、デーモンだって例外ではない。


 生物が生きているなんて思えるような、生半可な爆発でもなかった。


 災害と言っていい。


 森一つが地図から消滅したぐらいの威力だった。


 こんなんじゃ骨も残らんて……。


 魔法は恐ろしいと痛感した。


 「や……やりました!初めて魔法が出せました!」


 「喜んで良い惨状じゃないよ!?初めての威力じゃないでしょこれ!」


 「これどうしたらいいですか?」


 「どうにもなりません。大人しく逃げようぜ?」


 「確かに……一旦身を隠した方が良さそうですね。でも良かったです。私を信じてくれて、助けてくれて、壊れないでいてくれて……」


 ──そりゃ信じるさ。


 ──頼ってくれたもの。


 ──助けるさ。


 ──助けたいと、心のそこから思ったから。


 けど妙に引っかかる。


 壊れないでいてくれてって何の話し?


 ゾワゾワとした感情が俺の心の中で巡ってしまった。


 「壊れるってどういうことですか?」


 「私……魔法が使えた試しがなかったんですが、魔法を唱えようとすると杖が砕け散ってしまうんです……」


 「えっ……ロゼちゃん!?それ……俺っち死んでたってこと?殺されそうになってたの僕ゥ!」


 「だから言ったじゃないですか。一緒に……死んでくれますかって!」


 ただの、意気込みのような受け取り方してた、僕が悪いですね。


 この美少女、ガチで命を天秤にかけてやがった。


 ほんと肝が据わってる。


 絶対に倒すって決めてたのかもな。


 俺の考えが軽率だったのかもしれない。


 現に泣いて杖である俺を、抱きしめて謝ってくれた。


 こうしてみるとやっぱり、美少女だ。


 少女が泣き止んだ後、軽く自己紹介でもしておいた。


 今後も俺を装備してもらいたい。


 そのきっかけになれたらと……。


 「俺の名は……どうでもいいか。とりあえず、つえー杖だ。壊れないらしいし。俺は君を世界一の魔法使いにしてみせる!」


 「少し違いますよ。喋れることも追加して下さい」


 「超激レアだぜ!?」


 「ほんとにツエさんはちょーしが良いですね」


 「ちょっと聞いてしまったけど改めて。お嬢さん、あなたのお名前は?」


 「私は……ロゼ・スカーレッド。才能ゼロの魔法使いです。でも、私には夢があります」


 「世界一の魔法使いだろ?なら、これからも俺を装備して欲しい。ロゼの隣にいたいんだ」


 「なに言ってるんですかツエさん。当たり前じゃないですか。絶対に手放したりなんかしませんよ。私とツエさんはもうパートナーです!」


 「よっしゃぁー!これから共に魔法使いの高みを目指そうじゃないか!」


 「よろしくお願いしますねツエさん」


 「よろしくロゼさん。つーか、なんでこんな森の中に来たんだ?無縁そうだけど」


 「実は最近、魔法学校を追放されました。それがきっかけで国からも追い出されたんですよ。新しい学校の入学試験を受ける為に、ここまで来たんですけど道に迷ってしまって……」


 「追放なんてのもあるのか……」


 「困ってしまいますよね。魔力適性もなく魔法が使えない学生はいらないと言われました……」


 「まぁ……良かったんじゃないのか。見る目無さ過ぎるわそんな学校。こっちから願い下げだね!」


 たかが、十歳の年頃の女の子がここまで目標を定め、極めて困難な覚悟と決意を決めれるだろうか。


 俺が十歳の頃なんか……考えたくもない。


 これから、ロゼの為に頑張らなければなと、自分を鼓舞して誤魔化しておこう。


 ある程度話している内に、少し冷静になる。


 ロゼちゃんもしかして結構ケガ酷くね?


 ボッコボコにされてたよな。


 骨折もしてるはすだ。


 俺は思ったのだ。


 治療しないとマズくね?……と……。


 「アッカーン!!!!ロゼちゃんケガ大丈夫か!?」


 「ツエさん……絶対に大丈夫じゃ……ない……」


 「ロゼが……倒れたァァァァ!!!!」


 死んだのかとヒヤヒヤした。


 疲労とケガで気を失ったみたいだ。


 数時間眠ったままで、今やっと起きたところ。


 痛みを抑えながらロゼは、荷物から回復薬を取り出し、飲み干した。


 回復魔法でも使えれば良いが、もちろんロゼには使えない。


 ある程度は、準備して出発をしたらしい。


 傷はすっかり治り元気を取り戻したロゼ。


 一体どこの学校の試験を受けるのやら……。


 ひとまずは、魔法の習得と使用には成功した。


 こんなんで試験受かるのかなと。


 不安が募る。


 「行きましょうツエさん。魔法都市エルムーアへ」


 「そこに学校があるのか?」


 「ありますよ。三大名門校です!入学出来れば世界一の魔法使いの夢に繋がります」


 「へぇ〜、じゃあ行くしかないよな。ところでロゼはどこの学校を追放されたんだ?」


 「三大名門校のゾルアート校です!」


 「嘘だろ……大丈夫かよそれ。また追放されることもありえるんじゃないか?」


 「大丈夫です!多分……。私にはツエさんがついてますからね」


 「そりゃ……そうだけど。しゃーない、二人で頑張りますか。これから出発か?」


 「出発というか……あれです」


 ──忘れてた。


 ──森を全て焼き払ってた。


 ──おかげで見通しもバッチリだ。


 誰も超えられんような防壁。


 人を威圧するようなバカデカい城。


 活気のありそうな街。


 国防面も抜かりはないのだろう。


 私達は、そんな都市の近くにある森を一つ消し去ったのだ。


 「これ絶対バレてるー!!!!」


 「どうしたんですか一体!?」


 とりあえず、エルムーアの門を叩こうと思う。


 ロゼともちろん二人でだ。


 死んでも言えん。


 こんな大きな騒ぎが起こったんだ。


 私達がこの近辺の森を焼き払いましたぁ〜……なんて。


 国外追放待ったなし。


 ロゼは年相応のか弱い女の子だ。


 また追放なんてされてみろ。


 どこにあるかも知らん、最後の名門校に行く為に、旅立とうとするだろう。


 長い冒険に耐えられるはずがない。


 ──支えてやらねば。


 ──後に、世界一になる魔法使いの為に。


 落ちこぼれの、少女ロゼとの出会いはこんなところ。


 これより、世界一の魔法使い、ロゼ・スカーレッドの一生を語っていくとする。



お読みいただき、ありがとうございました!


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