キラキラしてるたからもの
※今作はトイレトレーニングが含まれています。
食事中など、ご注意いただけると幸いです。
「リアル謎解きゲーム?」
「制限時間内にゴールを目指す体験型のイベントさ」
「お父さんの担当エリアのテスト役をするの?」
「そうだね。感想ともどもよろしくね。はいこれ」
お父さんはそう言って私に機械を渡してきた。
「VRヘッドギアね。これつけて妹たちと一緒に?」
「そう。仮想空間なら広々と場所が使えるからね」
お父さんはそう言うと妹たちにも説明を始めた。
なにか約束してお父さんはヘッドギアを被らせる。
その様子を見てヘッドギアを私も装着した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お父さんたちの担当は洞窟なのね」
洞窟上部のかがり火が通路を照らす。
照らされた通路は奥まで続いている。
「ねーねいこー」
「ごーごー」
双子用連結式ベビーカーに乗った妹たちが呼ぶ。
「はいはい。出発するよー」
横に連結されたベビーカーを押し歩きだしていく。
土の道であちこちに小石がある。
なのにベビーカーは軽く安定していた。
(VRだからかな?)
現実とは変わった感覚を私は楽しむ。
前向きのベビーカーからも楽しげな声が聞こえる。
★ ☆ ☆ ☆ ☆
(きっとお目目キラキラさせてるんだろな……っと)
通路の先には人がいてなにか操作すると奥に進む。
(雰囲気的に開けなんちゃらと思ってたよ……)
私は気を取り直し人がいたあたりまで進んでいく。
「ねーね、かべー?」
「いきどまりー?」
「ちょっと待ってねー。扉だから開けてみるね」
そういうと私は人が立っていた辺りを探す。
「キーボードと案内板?」
「ねーねなんかあったのー?」
「なにかかいてあるのー?」
私の出した声に妹たちが反応する。
「えーっと待ってね。読むよー」
『文字を並び替えて新しい言葉を作りましょう』
『こうかんち』
「ならびかえー?」
「こうかんちをー?こっちの絵はー?」
「観覧車とか人混みかな」
私は振り向いて妹たちにこたえる。
妹たちに絵を見せながら私は考えていく。
(ひょっとしてヒントのつもりかな?)
絵を見ているうちにとある言葉が思い浮かぶ。
★ ★ ☆ ☆ ☆
『かんこうち』
文字を入力して決定すると扉が開く。
「観光地だって」
「ねーねいっぱつー。すごーい!」
「かんらんしゃのりたーい。いきたーい」
妹たちが口々に思いの丈を伝えてきた。
「そうね。これ終わったら頼んでみよっか」
「わーい!」
声をそろえて妹たちは喜ぶ。
キラキラした笑顔を見て私は頭をなでる。
「それじゃまたしゅっぱーつ」
後ろに回ってまたベビーカーを押し始めた。
★ ★ ★ ☆ ☆
『文字を並び替えて新しい言葉を作りましょう』
『噴火口区……ふんかこうく、か』
「ふんかってなあにー?」
「富士山とかのお山が爆発することかな」
私は軽く妹たちに噴火の仕組みの説明をする。
「へー」
「でこたえーこたえはー?」
期待に満ちた妹たちの声に押されヒントを探す。
腕を胸で交差している笑顔のハートの絵があった。
「うーん……これかなあ」
少し考えて私は文字を入力する。
『こうふくかん』
★ ★ ★ ★ ☆
開いた扉を進むとまた扉が行く手を阻む。
『文字を並び替えて新しい言葉を作りましょう』
『うん濃いヒゲ――』
「うんこー!」
私が読み上げた言葉に妹たちが揃って反応する。
「おしっこー!」
妹たちが思い思いに言葉を発していく。
「おヒゲだからね!濃いヒゲだから!」
「えーおひげー?」
「うんこはー?」
口元をとがらせて妹たちは私に言う。
「そうねーそれはトイレやおまるでしましょうねー」
軽く返事をして私はまたヒントを探す。
(なんでこの年頃ってこういうのが好きなんだろ?)
首をかしげる私の目に壺や椅子や食器が映った。
「おならー」
「ぶー!」
キャッキャッと妹たちの楽しげな声が耳に届く。
(飛び出す絵本のジャンプがおならになってたなあ)
まったく妹たちの想像力には頭が下がる。
(あれ?確かあの絵本の内容って――)
そしてそこから答えの糸口をつかむ。
『こうげいひん』
★ ★ ★ ★ ★
「お帰り。どうだった?」
「あ、うん。ただいま。それなりに楽しかったよ」
「その割にはお疲れみたいね。なにかあったの?」
出迎えてくれたお母さんと私は話す。
お父さんは妹たちとプレイマットで遊んでいた。
妹たちを大きなシャボン玉の輪で橋を作りつなぐ。
またシャボン玉を一緒に出したり追いかけていた。
「そうねーあの子たちは今トイトレ中だからねー」
「だからって……」
「ためたものを出す快感を味わってるの」
言いたいことはわかる。
「ひょっとしてお通じ悪い?」
お母さんが私の心をくんでか話しかけてきた。
「女の子にはよくあることなのよ」
「そうなの?」
「ええ。生理中は特に」
お母さんは私の目を見て優しく話す。
「生理中は女性ホルモンが活性化してるから」
「女性ホルモンってエストロゲン?」
「それもあるわね。大切なのはプロゲステロン」
別名黄体ホルモンとお母さんは続ける。
エストロゲンは卵胞ホルモンとも教えてくれた。
「この黄体ホルモンが原因なの?」
「そうよ。基本的には妊娠や乳腺の発達を促すのよ」
「基本的?」
「その一方で腸の活動を弱らせて水分をため込むの」
「だからむくみやすくなるのね……」
お母さんはここでお父さんをちらっと見る。
「本当は男性にこそ知ってほしいのよね」
「デリケートな話題でしょ?」
私はお母さんの言葉に反論する。
「そういう目で見られたら……」
「そういう目だけで見る人って思っとこ」
(知るだけ知って見守っていてほしいってことかな)
お母さんの気持ちをくみ私は静かに頷く。
「ありがとうお母さん」
「どういたしまして。それじゃ行こっか」
「シャボン玉飛ばしに?」
「それも良いわね。童心に帰るのも」
「……そうね。たまにはいっか」
正直今更シャボン玉は恥ずかしく思う。
(妹たちのためだから)
キラキラした思い出をひとつでも作ろう。
それがいつか妹たちの力になるはず。
「それじゃあお姉ちゃんシャボン玉飛ばすぞー」
「わーい!」
「こんどこそつかまえるのー!」
お母さんとお父さんはなにやら会話している。
それを横目に私は大きく息を吸う。
たくさんのシャボン玉が宙に舞う。
(キラキラしててキレイ……)
妹たちの瞳と前を飛ぶシャボン玉を見て思った。




