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瑠璃色のドールイーター  作者: 左右ヨシハル
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08.クレインの証言



次の依頼者クレインはベール町の中心街の団地に住んでいた。

中心街には学校があり家に帰る制服を着た生徒達がたくさんいた。


そんな生徒を鼠は不思議そうに見ていた。


「あれは兵隊さん?」


「あれは学生だね」


「どうやったらなれるの?」


ウルルの言葉が詰まる。


どうなったらなれるのか僕だって分からないよ。


「分からない?」


「…………うん。僕も分からないや」


すると鼠は口角を上げて心底嬉しそうに笑った。


「一緒だね。私も分からないから一緒だ」


そんな言葉にウルルはなぜか心が軽くなるのを感じる。

一緒という言葉だけでどうしてこんなに救われるのだろう。


「そうだね僕と鼠は一緒だ」


ウルルと鼠はクラウンの部屋まで進んだがどんなに扉を叩いても出てこないので少し待つ事にした。


団地の前には公園がありそこからクラウンの部屋が見えたのでウルルはそこのベンチに腰掛けた。


鼠は最初は隣で座っていたが暇になり走り回ったり草むらに潜り虫を捕まえて殺したりしていた。


それにも飽きた鼠は木の枝に吊るされたブランコを見つけて近寄るがそこにはすでに先客がいた。


その先客は金髪の癖っ毛でおでこを出したヘアスタイルで眉が少し太い女性で制服を着ていた。


鼠は退いてもらおうとゆっくりと近寄った。

経験で鼠は自分の顔を人が見ると誰もが嫌な目をして言うことを聞いてくれると知っているからだ。


目を細めて口を少し上げて身体を逸らす。

鼠は自分が傷つかないようにその女性がそうするのを頭で考える。


「そこ退いて」


「やだ」


その女性は鼠の顔を見ても無反応だった。

何も写っていないかのようにただの少女を見るかのようだった。


「聞かないの?」


自分の顔を見て何も聞かない人は今までいたがこんな普通そうな人が無反応なのは初めてだった。

それに意外性を感じた鼠は普段なら聞かないような質問をしたのだ。


「私ね。思うんだけど例えばオシッコって名前の人がいるとするじゃない?例えばの話よ?そのオシッコちゃんはきっと会う人、会う人に『オシッコって言うの?』って聞かれると思うのよ」


鼠は女性が言った事を頭の中で考えて納得する。


「うん」


「でもオシッコちゃんからしたら何十回、何百回と聞かれてる問いだと思うのよ。それに気づいてから私そういうみんなが当然、聞くような問いをあえて聞かないようにしてるわけ」


「どうして?」


「だってそうしたら相手の頭の中に私が色濃く記憶されるじゃない?そしていつの日かお風呂に入った時とかにあの女の子って名前なんだっけなーぐらいには思い出されるってわけ」


「そうすると嬉しいの?」


その女性は頭の癖っ毛をくるくると回しながら考える。


「うーん嬉しいってのとはちょっと違うわね。ほら特別感があるじゃない。私という存在が他の有象無象とは違う少しだけ特別になる気がするのよ。別にあくまで気がするって話よ?だけどそんなの自分が思っておけばいいわけよ」


「……特別な存在」


「そうそう。あんたも誰かに特別に思われたいなら私みたいにしなさい」


「分かった。そうしてみる」


鼠は頭の中でウルルを思い出してウルルの記憶に残りたいと思っていた。

初めて色んな質問に答えてくれる人。

初めてお話ししてくれる人。

初めて私の為に何かしてくれる人。


初めて……初めて?本当に初めて?


『大丈夫よ!●●●。私が守ってあげる!』


突然、そんな声が心の中から聞こえる。

鼠の頭の中に「分からない」が増えてきたので慌てて頭から消す。


「あのね。ここで何してるの?」


鼠はもっとこの女性と話してみたくて無理矢理、質問した。

すると女性は肩を下げてあからさまなため息をついた。


「ね〜〜あなた聞いてた?さっきのオシッコちゃんの話。面倒くさくて適当に相槌うってたわけ?そんな質問したって色んな人が私にしてるから全くダメね。記憶に残らないわ」


鼠は頭を抑えて考え始める。


「えーとえーと」


そして考えついた答えはシンプルに自分が聞きたい事だった。


「あなたの名前は?」


「うーんまあ及第点ね。60点ぐらい?それを聞いた人は今まで6人ぐらいいたけど。答えるのはあなたが初めてよ」


すると女性はブランコから立ち上がり人差し指を上げる。


「私の名前はミザリー。ミザリー=キリング……覚えた?」


「うん覚えた」


「あなたの名前は?」


「私は鼠!」


するとミザリーは吹き出して笑い始めた。


「ネズミ?名前が!?いいわね!面白いわ!きっと今日、お風呂に入ったらあなたのこと思い出すわね」


「鼠ー!!おいで!」


遠くからウルルの声が聞こえる。


「あなた本当に鼠って呼ばれてるのね。面白いわ!じゃあまた今度どこかで会ったらまたお話ししましょうね。ネズミちゃん」


「うん!またねミザリー!」


鼠は走りながら手を振った。



「あれは?」


「お友達のミザリーだよ」


ウルルはブランコで前後に揺れてるミザリーを見てどこかで見たことある気がすると朧気に思った。




クレインは最初は少し不機嫌そうに扉を開けたがウルルの顔と依頼書ですっかりおとなしくなった。


クレインという男は最初、見て思う事は眉が太いことである。

そして二番目にテカリすぎている七三分けの髪の毛だ。


散らかりゴミだらけの部屋でクレインはゴミをどかして胡座あぐらをかいた。


ウルルが立ちながら定番となった質問をするとクレインはウルルが立っているので仕方なく自分も立ち上がった。


「結構、最近なんですよ。私が頑張って稼いだお金で人形を作ったんですよ。すっごい可愛いお人形をね。そしたらやっぱり自慢したいじゃないですかー。それで夜に飲み屋で自慢してると緑髪の女性が話しかけてきたんです」


「緑髪の女性?」


ウルルは先ほどのアイビスの話と合致していると思った。


「それがすっごい可愛い女性で目がぱっちりしてて赤い目でね。あーそうそうあなたみたいな真っ赤な目………ってそれはどうでもよくてそれで近道しようと路地に通ったら後ろから殴られて気づいたら人形が奪われてたんですよ。それでここら辺で【人形攫い】って人達がいるのを知って……」


「その緑髪の女性について詳しく」


ウルルはクレインの話を遮る。


「え?そっち?……まあいいですけどまず緑の髪に真っ赤な目で若そうだったら20代前半ぐらいかな?──え?なになにその人が犯人なの?美人怪盗みたいな?」


「まだ分からないですけど───その女性に何か特徴的な何かはありませんでしたか?例えば顔とかに」


「何にもないなーめっちゃ美人って事ぐらいですかね」


ウルルはこれ以上は何も得られないと思いクレインの部屋を後にした。

最後にクレインは「もし見つかったらいつまでに払えばいいんですかね?」と聞いてきたがウルルは面倒くさくなって頭だけ下げて帰って行った。


辺りは薄暗くなり帰ってきたサラリーマン達が多くなってきた。


「今日はモルグ街で宿に泊まろうか」


鼠は「嫌だ!」と言った。

ウルルは驚いて振り向く。


「印象に残った?」と言っていたずらっ子のように笑った。


ウルルは今日だけで鼠の色んな笑顔が見れたなと仮面の下で頬を上げた。



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