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瑠璃色のドールイーター  作者: 左右ヨシハル
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04.七色動石



イーグルはウルルを見つけると目で少女に合図した。

少女は立ち上がった。


ウルルは右に行ったり左に行ったり軽い千鳥足でイーグルの方に向かってくる。

目にははっきりとクマがあり時々、机に手をつきながら歩いていた。


ウルルが席に着くと少女が目の前に立っていた。


「ドールイーターあんたにお客さんだ」


「私の人形を返して」


イーグルがウルルに話しかけると同時に少女が声をかけた。


「………」


しかしウルルの反応は無かった。

少女はチラリとイーグルの方を見る。


「ドールイーター、聞いてるぞ」


イーグルはウルルの顔の前で手を叩くとウルルはゆっくりと顔を上げた。


「あ、すいません。何ですか?」


「私の人形を返して」


少女の声にウルルは振り向かずに声だけ返した。


「………人形?」


「そう複数いた。たくさんの人で私の人形を奪った」


「僕は、基本的に一人で動くし人形()奪わない」


少女はウルルの隣に座ると初めてウルルは少女の顔を見た。


「その顔、誰にやられたの?」


血がついた少女の顔はいびつだった。

拭き取れず残った赤い液体と瘡蓋のような肌、そして切り傷。


「じゃあ私の人形は、どこにあるの?」


少女はウルルの問いかけを無視して話の続きを始める。


ウルルは無視された事に彼女の禁句タブーに触れてしまったと思いあえて声を少し高くして話し始めた。


「君の人形は、"七色動石なないろどうせき"かい?」


「分からない」


ウルルはその物は知ってるが名称が分からないと思い説明し始めた。


「えーと人形の心臓部分に石がはめ込まれてるだろ?その色が単色だったら七色動石なないろどうせきなんだけど」


「それだとどうなるの?」


「……それだと?んーそれだとね。人形に特別な能力が発現するんだよ。人形じゃなくても武器とかでも七色動石を核にすれば発現するんだけど……その特別な能力の事を"奇動力きどうりょく"って言うんだけど君の人形は何か特別な能力を持ってる?」


ウルルは早口で捲まくし立てると少し息を吸った。

普段、必要最低限の会話しかしないウルルは人との会話に慣れていないのだ。


「あんたの人形には何か能力があるかって聞いてるみたいだぞ」


イーグルはウルルの話を要約して少女に伝える。


「能力とかは分からないけど石は赤色だよ」


ウルルは少し考えた後に顔を横に振った。


「やっぱり僕じゃない。赤色の七色動石は奪ってない」


「じゃあ誰が奪ったの?早く教えてよ!」


少女はまた掻き始めた。


「誰なの。誰誰誰、だれだれだれ」


ウルルは慌てて少女の手を掴む。


「や、やめなよ。多分だけど【人形攫い】の奴らだよ」


少女の手が止まる。


「【人形攫い】は、どこにいるの?」


「分からない」


「どこ?」


少女の目は、まるで闇に染まったように何も写していなかった。

その目を見ると誰もが吸い込まれ萎縮してしまうのだ。


ウルルでさえ例外では無かった。


「じ、じゃあ僕が探そう…か?」


イーグルは驚いて拭いていたジャッキを置いた。


「おい正気かよ!やめとけよそんな一銭にもならねえ善意なんて!」


「いや元々【人形攫い】には目をつけてたんだ。そいつらが何故、人形を奪うのかとか、だって人形は持ち主しか動かせないんだから。意味ないのに……だとするとその中にある動石が必要なんじゃないかとかね。そうするともしかしたら手がかりがあるのかも知らないしそれに……それに…」


すると突然、ウルルは目を瞑りカウンターに倒れ込んだ。

イーグルはため息をついた。


「こいつ飯食わねえし寝もしねぇからよく気絶すんだよ。おい俺はずっと諦めた方がいいって言ってるんだぞ。それはお前の命が危ないからだ」


イーグルはウルルの寝顔を見ている少女に声をかけた。


「でも探してくれるって」


少女はウルルの頬っぺたを触る。


「あのなあ?こいつも俺もだけど立派な犯罪者なんだよ。分かってんのか?その犯罪者に頼み事するってどういうことかよ」


そう言うイーグルの顔を少女は見つめた。


「分からないけど、私にはネイロしかいないから」


「ネイロってお前の人形の名前か?」


「そう。ネイロがいないなら私は生きられない」


「チッはあーもういいや。どうなっても知らねえからな。そいつどっか隅っこにほっぽとけ」


そう言うとイーグルは違う客の所に行ってしまった。


少女はウルルの肩を引っ張りながら自分が座っていた所まで引きずるとウルルを壁に座らせた。


そして少女はウルルの顔を見ながら彼が目を開けるまでずっとずっとそばにいた。



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