遺伝子 インプリメント
大変興味深い研究レポートの内容を元に書き上げました。
インターネットを検索すれば過去の海外の論文を発見できるかもしれません。
削除されていなければ。
遺伝インプリント
谷口恵美は苦しんでいた。一人息子の武志の容貌に。
谷口恵美は32歳。就職して2年目に寿退職していた。8年前に結婚して、武志は現在7歳の誕生日を迎える。夫の隆史は6歳年上であり社内恋愛で結婚した。
現在は郊外に自宅を持ち幸せな日々を送っていた、はずなのだが。
最近、武志の外見がハンサムになってきているのだ。目鼻立ちがくっきりしてきて、まるでハーフのような外見なのだ。もちろん血液型は3人ともB型であり日本人である。
普通の家族であれば、子供がハンサムであれば喜びこそすれ悩むことなど何もないはずなのだが。
谷口恵美には秘密があった。大学在学中にアメリカの大学に1年間留学していた。
その頃、ホームステイ先の家族にハンサムなリチャードという大学生がいた。年齢が近いこともあり、仲良く行動しているうちに大人の関係になってしまった。
恵美本人は、若気の至りとしてよき思い出として“初体験”の記憶を封印していた。
夫になる隆史以外で関係を持ったのはリチャードだけだった。
一人息子の武志の外見は日に日にリチャードに似てくるようだ。こんなことってあるのだろうか。顔のパーツは夫の隆史に似ていない。ママ友からは隔世遺伝なのかしらと言われている。あまりにもハンサムなため、ほめられることはあっても悪口を言われないのはせめてもの救いだ。
谷口恵美は、一人苦しむのに疲れ真実に向き合おうと決めた。遺伝子検査を行うことにしたのだ。遺伝子検査の結果、隆史と武志は99.9%の親子判定であった。
谷口恵美は、遺伝子検査機関に質問をした。
生まれてくる子供に父親の遺伝子以外のほかの男性の遺伝子が混ざることはあり得るのか。
恵美は帰ってきた答えに驚愕した。
「アメリカの遺伝子を研究している科学者が発表した研究論文に回答に近いものがあるので御紹介します。ハエを使った交配実験において違う種類のハエ2匹と交尾をさせたハエが生んだ子供が、後に交尾させたハエの遺伝子で誕生しているにもかかわらず外見だけが先に交尾させたハエの特徴を受け継いでいるケースがありました。とても興味深いことが現実に起こったため、当時学会ではちょっとした騒ぎになりました。現在もこの報告書はインターネットで検索すれば見ることが出来ます。」 終