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バリスタ技師パーズ

紹介


ルミナ 主人公のヒロイン

女性 20代前後

容姿 セミロングの茶髪。愛嬌ある出立ち。平民ながら、品格を備えている。

性格 淑やか。自己主張を控えるなど、相手を思いやる言動行動があるが、芯のある女性。

特技 家事全般

スキル 人の心情に寄与する力があるらしい。


自信を失う中、魔物に襲われていた。心身共に救ってくれたリクトに一目惚れをしている。一途に思うリクトには、献身性を見せる。

一方、リクトからは一定の距離で接せられている。

 ロトスについて数日、ようやくこの街にも慣れて来た。

初日に酒場で冒険者連中に悪がらみされるなどのアクシデントはあったけど、それ以外は過ごしやすいところだ。


都市中央にそびえる屋敷がルミナの務めていたところだろうか。


 紹介状を頼りに人探しをする最中、嫌なものを見た。

奴隷買いが普通なのだろうが、本当にもののように扱っている。


「あれは亜人だろうか」


初めて見る種族だが、あの様な扱いをされるのはどうにも胸くそ悪い。



やっと紹介状の宛てにたどり着いた。

街で人探しをするのは想像以上に困難だった。


「おぉー、これがバリスタか。想像していた木組みのものではなく鋼鉄造りとは」


やっぱりでかい建造は良い。

アガる!!ロマンだ!!


 宛先の門番兵士によると100年程前に大型魔物が街を襲い、その際に最終防衛として活躍した兵器らしい。

以降は整備だけしている遺産だそうで、一応技師がいる。

なんとも偏屈なオヤジだと言う。


「あのオヤジに会うなら上等な酒でも持っていきな」


酒に溺れるタイプなのか?

会うのが少し気が重い。



「誰だ」


低くく酒焼けした声の主が探していた技師らしい。


「パーズさんですか?バリスタのことについてお聞きしたいのですが」


 名産の酒を見せながら伺いをたてる。

クイッと顔を傾け、静かに工房に案内される。


自堕落な生活だ……


しかし、技師と言うだけあって、工具類はしっかりと手入れされていた。


「なんだお前は。歴史家か何かか。あんなもん知ってどうする」


単刀直入に。


「これを見てほしい」


 弓具を出した。

旅を続けるうちに徐々に劣化していってるのがわかった。


「これは?弓か?しかも見たことない形状だが……」


だが、さすがは技師。

すぐさま仕組みを理解した様子だった。


「お前どこの生まれだ。こんな不安定な弓見たことねえな。そもそも、弓を使うやつももはやいねぇってのに。」


 ルミナとの話で異世界人であることは伏せた方がいいとのことだった。

が、腹を割らなきゃ伝わらないこともある。

端的に話を始めた。


「こりゃ異世界の技術ってことか。なかなかおもしれぇじゃねぇの。んで、これを直してほしいと?」


話が早い。


「まぁ、無理だな。オレ以外にできるやつもいないが、まず素材がない。よしんばあったとして、一から作り直しだ」


そこをなんとか。

粘り強く頼み込んだ。


「お前さんどれだけこの街にいるつもりだ?何年かかると思ってる」


 問題になっているのは、リム部分だった。

何層構造にもなっており、この世界ではカーボンファイバーはないとのこと。


「なら、これはどうだろう?」


プライを起動させる。


「お前、それはマテリアルサークルじゃねぇか。こいつは驚いた」


プライの性能にはさまざまな方面から呼び名があるようだ。


なんとか試行錯誤した。


「こいつでもダメだな。精製した物が用途を終えると消えちまう」


パーズは沈黙の後、こうも続けた。


「しかし、なんだ。久しぶりにたぎるものがある。時間はかかるが、リペアだけならやれるかもしれん」


さっきまで酒の抜けていなかった顔が職人の顔になっている。


「任せるよ。報酬はこれでいいか?」


通貨を出そうとした時に、小瓶が落ちる。


「おおっ、それは蒼金か?それさえあれば、あいつも……」


今までにない食いつきようだった。


「なら、これで報酬は支払わせてもらう」


「本当か?なら成功報酬でいい。オレにやらせてくれ」


問題はあったが、なんとか依頼に漕ぎ着けた。

最愛の弓具を渡し工房を後にする。



 この旅で始めて弓を持ち歩かずに過ごすことになる。

相棒がいない。

少し寂しく不安になる。


 酒場で飲んでいると、また冒険者が絡んできた。


「なんだぁ?今日は弓持ってないのか?」

「恥ずかしくなっちまったか?それとも、壊れたか」


弓のことで執拗に罵倒される。

無視を決め込むが、以前の街でのことを思い出しながら、内心は酷く辟易していた。


「やめろ、騎士団だ」


辺りが静まり返る。


「お前か?パーズを訪ねたと言うものは」


門番から聞いたのだろう。

小さく頷く。


「ロトスでは、最近エルフ族が反旗を翻している。弓は忌むべき道具だ」

「お前にも嫌疑がかけられている。ついて来い」


 騎士団に連行されそうになる。

流石に、弓矢を持っていただけでこの疑いようには驚きを隠せなかった。


同じ弓を使っているから反乱分子の嫌疑だと?

冗談じゃない。

なんとか釈明しなくては。


「なにをしている」


 店の奥から、それは優雅な出立ちで位の高そうな騎士らしきものが出てきた。


「ガスト殿!!これはお食事中失礼しました」


「この者は人を訪ねただけなのだろう。それに見たところ幼子程度の魔力しか帯びていない。このようなものが野党だと思えんがね」


黙り帰る騎士団。


「ちっ、ガスト殿に免じて見逃す。だが、置かれた状況は変わらん。ゆめゆめ忘れるな」


騎士団は引き下がっていく。


「ありがとうございました。名のある方とお見受けしますが、なにぶん世事に疎くて」


「まぁ、良かろう。お前もこの場から去れよ」


冷ややかな視線を浴びせられる。

言われるがまま店を出た。


「あいつは誰だったのか?ガストとか言っていたが」



 翌日

弓がなければやることがない。

街の散策と食べ歩きをしながら文化に触れることにした。

市民の生活ぶりや仕事。食事に流通品。

現世では海外に行ったことがなかったから、何もかも新鮮だ。


 大きな違いと言うと、魔法と生活が深く結びついているところだろう。

子供でも、日常的な浮遊魔法くらいなら使えるらしい。


「そう言えば、ガストからは"幼子程度の魔力"と言われていたな」


少なからず魔力が宿っていると言うことか。


現世との文化文明の違いを考察してみた。


優れていた点はIT文明の発達か。

こんな時ネットで検索出来たら楽なのに。


「なぁ?プライ。お前はそんなこと出来ないのか?」


当然返答はなかった。

ご覧いただきありがとうございました。

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