ルミナとの出会い
紹介
プライ 浮遊する光源体
スキル モノの精製
蒼金を取り込み、光源体から蒼色の金属プレートに変化。映写印刷の様に矢などを精製する。
魔物の粒子を取り込み精製材料としている。
女性はモノクロベアに襲われていた。
発情期になると、人里に出現し白黒の衣服を纏う同性を襲う。
魅力的な同性には特に、強い対抗意識を示すジェラシーたっぷりの魔物だ。
パンダだよな?あれ。
魔物にも発情期があるのか。
簡単に追い払う程度の威嚇射を行った。
愛護団体に怒られたらかなわんからな。
「大丈夫か?はっ
で す か……」
「あ、ありがとうございます」
思わず、うわずった。
好みど真ん中の容姿だった。
彼女の名前はルミナ。
温かみのある女性らしい声。
セミロングの髪は日の光に反射し艶めく。
オレの口元程に頭が来る身長。
衣服は地味ではあったが、白黒になっているわけでもい。
スタイルは…まぁ分からない。
さすがに、このままにしておくことは出来ず、簡単な手当てと村まで送ることに。
東に進むにつれ、魔物は減り最近では見かけなかったが。
モノクロベアの襲った理由が分かった気がする。
口調や仕草から女性らしさが伝わって来た。
好みと表現したが、絶世の美女と言うタイプではない。
もちろん整った顔立ちだが。
なんというか、すごく安心するタイプの女性だ。
ただ、この様な相手には下手に関わらずにいた方が良い。
下手すると、壺やら加入やらの裏があるもんだ。
現世での経験と知識が警鐘を鳴らした。
「私、ロトスの街で侍女をやっていたのです」
ロトスはここから一週間程行った街で、この国でも指折りの大都市。
仕えていたのは貴族だったが、慰み者にされそうになったところを耐えきれず逃げ出した。
らしい。
「わたしには初めから無理だったのです」
襲われた直後の興奮と安堵。
仕事への挫折と苦悩。
ルミナの表情が曇り始めた。
この顔は。
こっちでも変わらないんだな……
社会人になり、そこそこ頑張ったが、要領の良い奴だけが出世して、面倒事ばかりが舞い込んで潰れてしまった。
そんな奴らを思い出した。
静かに頷きながら話を聴いていた。
堰き止められていた物が一気に溢れ出たかのように泣きだす。
この世界の社会構造や教育環境がどんなかは分からないが、現世とは全く異なるのであろう事は感じた。
ラルド達以来で人とここまで深く関わるのは始めてだった。
同時に、深入りするとやばい!!
とオレのセンサーが告げていた。
ほとんど廃村の誰もいない家。
一人で住むには広く、家族で住むには小さい古びた家だ。
簡単な食事を振舞ってくれた。
そして、お礼に今日はここに泊まってくれ。
とも。
--ほらな。どんどんとおかしな方向に傾き出した。すごく美味しいのに気が気じゃない--
「狭いですがどうぞ。とられて困るものはありませんから」
家族で使っていただろう寝室に案内される。
もちろん、ベッドは別だ。
隙間風はあったが、綺麗に掃除され、お日様の匂いがする布団が用意されていた。
以降、言葉はほとんど交わさず、布団にくるまった。
--こうなったら出来る限り平静に、何事もなくやり過ごすしかない。覚悟を決めろ。賢者モードだ--
隙間風は音を立てているのに、ルミナが布団に潜り込んだ。
シュルシュル
と衣擦れの音ははっきりと聞こえた。
--ん?それにしたって無防備じゃないか?
とられて困るものって、自分のことを考えての言葉なのか--
独り言が尋常じゃない。
なんだったら、召喚されたことや、死線なんて目じゃないくらい。
ただ、それと同時に冷静さもちゃんとあった。
嫌な思いして逃げて来たくらいだ。
安心して眠ってもらいたい。
「おはようございます。よくお休みになられてましたね」
過去最高の思考迷路の末、なんの旨みもなく寝落ちしていた。
「布団はふかふかで、洗濯の良い匂いがした」
「それは良かったです」
「……本当に何にも手をつけられなかったですね……」
ルミナが視線を外しながら話す。
馬鹿なオレでも分かる程度には、ルミナの顔は赤面していた。
ん?実はOKだった的な反応なのか?
ありもしない妄想をしては、朝からドキッとする。
「気になっていたのですが、その浮いているものは魔法ですか?」
プライを指す。
「あー、なんと説明すれば良いのか」
これまでの経緯を話す。
「異世界の方と言うことですか?」
伝承によると、今までも異世界人は度々出現するらしい。
その度に世界に技術革新がなされ豊かになって行ったのだとか。
「それなら。父の蔵書が」
なにかを思い出したらしく、書斎へ案内された。
唯一この家でしっかりした造りの部屋には、多くの本が並べられてらいた。
プライについて話が触れる。
伝承記に載っている、古の英雄にも同じような飛行体が描かれていた。
そして、こんな伝説もあった。
--五色図--
創造の蒼
法則の黄
性質の翠
革命の緋
浄化の白
これらは世界の営みに深く関係しているのだと。
ラルドが言っていた泉と渦の話も、これに起因するらしい。
なんとなく言わんとすることはわかるが、現実離れした概念だ。
なら、このプライは蒼のため、矢を創造出来ると言うことか?
なんともRPG向きだな。
少しの座学を終え、気晴らしに村を歩いた。
人口は少なく資源もない村だが、気の良い人ばかりだった。
目的がなければこのまましばらく滞在したいくらいだったが。
「長居すると、オレの旅はここで終わってしまう気がする……」
村年寄りに呼び止められた。
「なんじゃ?お主弓なんぞ使うのか?やめとけやめとけ場合によっては、あらぬ疑いかけられるぞぅ」
どうやら田舎でも関係なく、弓使いは異端らしい。
「わしも昔は兵士だったんじゃが、弓使いはいなかったのぉ。ただ、あのバリスタだけは破格の兵器だったのぉ」
弓は弓でもバリスタならあるのか。
ロトスには未だあるらしく、ごく稀に点検もされているとか。
「親父さん。そのバリスタのこと教えてくれ」
あまり勧められないんじゃが。
と関係者を紹介してくれた。
「いいか、弓は隠しなさい。あんたはルミナを助けてくれた。悪い思いはしてほしくない」
なんだろう、弓使いは疎まれているような感覚。
ルミナに引き留められながら、数日だけ滞在した。
初日以外は村年寄りのところに泊めてもらうという、
チキンいや紳士ぶりを見せた。
そろそろ出発しよう。
タイミングを逃せば辛くなる。
ルミナには笑顔が戻っていたが、別れを前にまた曇りがちな表情をしていた。
何も持っていないがプライに作らせた矢を出す。
「オレの世界では、破魔矢ってのがあってな。お守りがわりだ」
少し屈んで、子供にあげるように手渡した。
涙ぐむ姿をよそに、振り向かずに村を後にした。
後ろ髪を引かれるとはこのことか。
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