神器プライ
紹介
ラルド 男性
初めて会う現地冒険者パーティのリーダー格
正義感が強く、人懐っこい。
剣使いで、相当の力量がある。
師匠は有名な人物らしく、心から尊敬している。
ヒスイ 女性 同じくパーティの一人
穏やかで一際綺麗なお姉さん。
魔法と知識で仲間をサポートしている。
ジスト 男性 同じくパーティの一人
体格が良く、見るからにパワータイプ。
寡黙だが、ニカッと笑顔を見せる。
タンクとして攻守のバランスを保ち戦う。
「でかい……」
突如として巨像が出現し、襲いかかってくる。
しかも、なんともわかりやすい弱点を顕にして。
「あそこの核を狙えってことか。初期ステージのボスってわけね」
控えめに言って、正気じゃない。
巨像の一振りは壁をやすやすと粉砕していく。
こっちは、机の角で骨折する様な生身だってーのに。
どうにかこうにか、弓を手にし迎撃を試みる。
「ここか」
核目掛けて放つ。
「なに、弱点じゃないのかよ」
たしかに矢は当たったが、弾き返されてしまった。
もう一度距離を取る。
「なんだ?」
走り回りながら、核の変化に気が付いた。
そうか。
この距離じゃなきゃ、本当の核に届かないんだ。
穴の空いたレンズが多重構造になっている。
この角度、この距離でないと有効打にならないようだ。
シュン
シュン
全くもって当たらない。
針の穴を通すようだ。
元々、競技では的は動かないし、
動物や魔物を射る時でも止まるのを待つ必要がある。
残りの矢も少ない。
「ハァハァ……体力も限界だ」
今立ち止まったら死ぬんだろうな。
これからだって思ったのに。
ラルドから預かったアクセサリーが目に入る。
ここからだ。
これからだ。
オレはこの先の物語が見たいんだ。
気配のコントロールを忘れ無我のまま射に入る。
殺気に巨像の動きが止まった。
狙いを済ましているはずなのに、視野が広い。
当たる。
そう、確信があった。
余計な力は抜け、流れるように射る。
パリンッ
ガラガラガラ
石像が大きな音を立て崩れていく。
「疲れた。良い射だった」
そのまま倒れ込んでしまった。
気がつくと、光の様なものが浮いていた
–受け取れ–
そう言われた気がしたが、もう聞こえない。
疑問はあったが、安心したら眠りについてしまった。
石像の一件以来、飛行体が付き纏っている。
お前はなんなんだ?
害はない。
あの言葉から察するにアイテムってところか。
「どんな役割があるのか。まぁ、少し光って明るいし、気は紛れるけど」
アクシデントはあったが、はれて出発だ。
この世界で新たな一歩を踏み出した。
未だ、ここに来た時の記憶も、理由も分からないが、胸の高鳴りだけはたしかだ。
草原を越え、川を越え森を抜け、大きな河に辿り着き、今夜はここで野営することにした。
森と河を隔てる壁面には、幾重にも重なる層が見られた。
「この世界も、大地の創りは一緒なのか」
火の光と月の光が反射した壁面は、キラキラと無数の色を放っていた。
道中の野宿も上手くやれた。
寂しい気持ちも、この飛行体のおかげで紛れた。
「いつまでもお前じゃ寂しいな"プライ"だな」
ほんの少し、プライの発光が強くなった気がした。
その光は神殿の光に似て少し暖かかった。
翌朝、河の上流から流れ込む冷気によって起こされた。
「うっ、さむっ。上には湖かなんかがあるのか?」
現世でも似た現象があったことを思い出した。
季節問わず、明け方には湖畔の冷気が下流に流れて行くのだ。
「遠回りになるが上を目指すか。この河は渡れないしな」
上流を散策することにした。
そろそろ食糧も切れる頃だ。
何か調達しないと。
だんだんと道のが険しくなって行く。
大きな岩が転がる様になってきた頃、古い作業場の様なところに出た。
掘り起こされたり、岩が割られていたりと、人の手が入った跡があった。
「なにかを採掘していたのだろうか」
放置されてからかなり時間が経っている様だ。
現役なら、近くに人が住んでいるかもしれないけど。
生活の気配もなさそうだ。
「金でも取れたら良いけど」
半日ほど歩くと、予想通り湖畔の広がっていた。
なんとも幻想的な青色をしており、樹々を水面に反射させている。
「なんて綺麗なんだ」
水を汲み水質を確認してから、飲み水にした。
飲めそうだ。
昼の日差しと歩き疲れた体の火照りを、冷却するかの様に浸透する。
「っぷはぁー。美味い」
透き通る水の中を優雅に泳ぐ魚の姿を発見。
焼き魚にしたら。
想像だけでジュルリとよだれが出る。
しかし、あいにくと釣具は持っていない。
目の前に魚がいるのに。
「これで射れるか?いや、紐を括り付けたとして、水に射ったことはない。」
水中に入ったら水圧で失速するだろう。
ことは明白だった。
周辺を散策しながら、考えを巡らした。
が、答えなんて一つしかない。
「猛烈に魚が食べたい。食べたいんだ」
大概、欲に目が眩んだら止められない。
「ここで食べなきゃ、自然様に申し訳がない」
誰に聞かせるでもない持論を、プライに聞かせる。
「魚も気配を感じるのだろうか。振動には敏感だよな」
気配を感じて水底に逃げられでもしたらまずい。
チャンスは一度だろう。
そうだな。ちょうどあの流木くらいか。
慎重に距離を確かめ、獲物が来るのを待った。
弓はずっと引き続けることは出来ない。
筋力が保たないのだ。
だからこそ、脱力して静かに待つのがちょうど良い。
なんで弓始めたんだっけ?
剣や銃でも強そうなものはあったのに。
物思いに耽りながら、射程に入った獲物を射抜いていた。
自分でも驚くほどリラックスした状態での射だった。
ともあれ、獲得した戦利品をいただこう。
ヒスイからもらった図鑑に載っていて助かった。
ポピュラーな魚らしい。
調理も簡単そうで良かった。
やはりここは塩焼きだ。
「美味い!」
食べながら考えていたことがある。
さっきの矢についてだ。
普通なら、水に入ったら飛沫が上がるだろ。
浅瀬とは言え、ブレずに刺さっていた。
「矢が痛まなくて良かったけど、あれはなんだったんだ?このスライムの被膜が関係しているのか?」
ただの偶然だったかもしれない。
今考えても答えは出ないだろう。
思考はとまり、食後の満足感に浸っていった。
森の動物達が騒ぎ出す。
「な、なんだ」
血糖値が上がり、ポヤポヤと気の抜けた感覚が揺り起こされる。
メキメキと樹々が薙ぎ倒される音。
ズリズリと地を這う音。
「何か、とてつもないものがいる」
息を殺し臨戦態勢に入る。
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