初めての出会い
紹介
リクト 主人公の弓矢使い
男性 20代後半
容姿 中肉中背。軽い癖毛の焦茶髪。
性格 穏和。好奇心あるものの慎重派。一歩引いて見るタイプ
特技 洋弓
スキル 少しばかりの身体機能向上
一団は真っ直ぐこちらに向かっているようだ。
が、なかなか来ない。
飯でも食って待つか。
「おい、お前大丈夫か?」
はっ、寝てしまった。
冒険者の名前は、
リーダーのラルド。人懐っこく好青年って感じだ。
サポート専門のヒスイは、長身でおっとりしたお姉さん。
寡黙で、がっしりとした体格のジストはタンクだそうだ。
聞けば、ここは人界と魔界の境だと言う。
「魔界と言っても、こっから西へ相当行ったところだけどな」
今は人界から波紋状に各国の騎士、冒険者が勢力を伸ばしているらしい。
「昔は魔界も範囲がすごく狭かったらしいの。この辺りも普通の動物が暮らす豊かな自然だったとか」
梨もどきを振る舞いながら話を進めた。
「なんだこれ!やたら美味いな!」
「私もこんな甘くてみずみずしいの食べたことないわね」
味については推測でしかないが、スライムが影響しているようだ。
ざっくりとした解釈だけど、この世界は輪廻しているのだとか。
生まれ変わるべきものが生まれ変われないと魔物になる。
らしい。
ふーん。なるほどね。
よーわからん。
わかったことは、この世界の人々は魔物を討つことが当たり前だってこと。
そーゆー食物連鎖的なあれなんだそうな。
何よりの驚きはこの世界では、弓矢は古代の武器だそうだ。
いや、古代と言うか武器として成立していないらしい。
農具で戦う。
そうゆーレベルだと。
「それでも、おれにはこれしかないからな……」
不思議がられながらも、多くに触れないでくれたこの人たちは、
"良いやつら"
なんだと思う。
すっかり話し込み、ここに来てから始めて人と過ごした。
良かった。イレギュラーではあるようだけど、なんとか馴染めそうだ。
翌日、狩りに同行した。
なるほど。昨日の説明がやっと理解出来た気がする。
魔法のある世界。
魔法による武器が成立する世界。
こんなの、火薬がなくても銃が撃てる。
弾も創造出来るなら、力が続く限り無限じゃないか。
疎外感。劣等感。脱力感。
竹槍で飛行機と戦うようなものだ。
弓を構えて戦うのが惨めに思えた。
それでもと、狩りに参加すると、
爆発音に振り返るように一同と、相手取っていた魔物がこちらを見た。
なんと、絶望的な顔をするのだろう。
オレはそっと構えを解いて、引き下がった。
「おい。お前なにもんだ」
先程まで和やかだった顔に、暗雲が立ち込めていた。
なんで怯えるように話すんだろう。
ここに転移?転生されたことを話しだす。
「そうか。詳しいことはわからないが、そんなこともあるんだろう。問題はそこじゃない」
問題視されたのは、殺気だった。
殺気の向け方が異常だったらしい。
「殺されると思ったぞ」
「オレらの師匠なら、お前のこと何かわかるかも知れない。会ってみるつもりはないか?」
誤解が解けると、トントン話が進んでいく
「そうだな。ここにいても今のところ何もないし会ってみるよ」
当面の目標が出来た。
殺気の抑え方を旅の期間ギリギリまで教えてくれると言う。
話している時や動作の中では感じられないらしいが、弓を構えた時に強烈な気配を放つらしい。
魔物がいくら待っても目の前に現れないのはそのせいだったようだ。
指導の日々も終わり、別れの時が来た。
感謝のしすぎは嘘っぽくなるから好きではなかった。
しかし今は心から感謝している。
「みんな本当にありがとう」
「これを渡しとく。門弟の証だ」
渡されたアクセサリーには、初日にスライムが落としたドロップとよく似た石が嵌め込まれていた。
「この石ってなんなんだろうか」
皆にドロップ品を見せた
詳しいことは不明だが、師匠が使う石が普通の石じゃないだろうとのことだった。
「お前は本当に不思議なやつだな。連れて行ってやれないが、必ずまた会おう」
そう言うと、振り向かずに去っていった
あれから数日、ようやく気配のコントロールが出来るようになってきた。
食べれるものも教えてもらった。
食事のバリエーションも増え、心にゆとりが生まれてきた
--少しだけ、この世界で分かったことを解説しようか--
例えば、初日に仕留め損ねた鹿型。
動物としての鹿と魔物としての鹿がいる。
鹿の魂があるべき場所に帰る前に、なんらかの影響を受けると、魔物として出現するらしい。
幽霊みたいなものだ。
一説によると、人界には生の泉があり、魔界の最奥には死の渦があるんだとか。
その渦に戻れないものが魔物になる。
そして、その渦に異常を来たす存在が魔王とされている。
魔物自体は害悪とは考えられず、営みの内にあるようだが、そのバランスを崩す魔王に関しては、明確に敵なのだと言う。
この草原が世界の境だと言うのは、ここから先は魔物が自然発生するエリアに相当するからだ。
「なんとも辺境に呼ばれたものだ」
これから向かうのは、東の人界。
まずは、師匠なる人物に会って詳しく世界の成り立ちを知ることにした。
「よし!かなり上達したな」
はぁ、オレもいつか魔法使えるようになるといいなぁ。
そしたら、それこそゲームやアニメの世界のような必殺技が射てるのに。
「でも、この競技用の弓矢じゃダメか」
この世界に来て、弓具以外持ち合わせていなかったが、ラルドにもらったナイフがあって助かってる。
動物の革を剥いだり、料理に使ったり重宝している。
「会いたいな。皆だけじゃない、もっといろんなものを見てみたい」
始めに感じたワクワクが、込み上げて来た。
よし。
行こう。
出発を前に、神殿に立ち寄ることにした。
ラルド達と会ってから、ここにも来なくなったな。
一応挨拶だけして行くか。
石碑に手を合わせ出発の決意を念じた。
信心深い方じゃないけど、なんとなく祈ってしまうな。
苦笑いしながら、後にしようとした。
その時。
ガラガラと音を立て、祭壇が揺れた。
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