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ロック撃墜

紹介

グリフォン 魔獣


容姿 個体により様々な鳥種の顔を持つ。


太古から蒼の山脈に生息しており、エルフ達からは畏怖を込めて神格化されている。ホワイトサーペントを捕食するなど、並の魔物では比べ物にならない程の存在。

群れを成し狩りを行うこともあるため、非常に厄介である。

 ロックの敵意が最高までに高まっている。


「方陣を重ねろ三、いや五重にしろ!!」


セルフィーがエルフ達に指示を出す。


エルフ達は想像だにしなかった方陣の貫通に戸惑いを覚えているようだ。

しかし、セルフィーの掛け声で、勝機を見る目に変わっていた。


だがしかし、オレの体力も、皆の体力も後一回が限度だろう。

弓具もこの威力を受け止めきれそうにない。


「ラストチャンスだ!!」


 一丸となってロックへ挑む。


ヒドラ矢を放つ。

ルミナの支えを頼りに衝撃に耐え、すかさず指示を出す。

五重の方陣を通過し、空には不規則な光の残像が浮かび上がった。


通過する度に速度が上がっているのか?!

これなら行ける!!


「一、二、三……そこだぁー!!」


 爆音と共に、ロックの胸に突き刺さる。

矢は塵と消え、ロックの羽毛を削り切り肉を抉っている。


 ロックがその場に倒れ込む。

大地が激しく振動する。


それでも、まだロックを撃ち倒せない。


 ロックは大地に擦り付けた顔面を、両翼でゆっくり起こし上げる。

ダメージの震えか、怒りの震えか。ロックの体が小刻みに震えている。


 グリフォンに騎乗し、ロックの頭部へ飛翔する。


「やっと会えたな。さんざん見下しやがって」


 初めて、ロックの顔の全容を見た。

本当に馬鹿げた大きさの核があった。


正直限界だった。

が、気力を振り絞り核を穿つ。


 ロックはからがらに矢を避け、全損を回避した。

しかし、ヒドラ矢は核の四割ほどを削り、左目を潰した。


さすがはロック。

王者としての意地か。

悲鳴奇声上げることく、堪えている様だった。


とどめを刺しそびれた。

もう一度だ……


力ない身体で準備する。


ぶぉん!!

ロックが起き上がり、空へ逃げていく。


 荒れ狂う気流に揉まれ、オレの身体はグリフォン共々落下していた。


……はっ!!


見上げると、ルミナとセルフィーが手を握り、落下を引き留めてくれてた。


「ははっ、ルミナを助けられなかったのに、ルミナに助けられちまった」



 気がつくと、ベッドの上だった。

丸一日眠り込んでいたらしい。


「良かった。身体に異常ありませんか?」


見渡しても、異常らしき異常も、目立った処置跡もない。


問題ない。

腕を上げ健康な様子を見せる。

いや、筋肉痛が半端ではない。

苦笑いで、ルミナを見る。


「みなさん呼んできますね。お食事もお持ちします」


 その後、セルフィーから事情を聞いた。

ロックは西へ向かい、里は平穏になったこと。

グリフォンも蒼の山脈に帰って行ったこと。

里はほぼ全壊ながら、このウロと地下が残っているため、さほど問題はないこと。


 そして、いつの間にか英雄扱いだった。



「まるで祭りだな」


 ほぼ全壊の里で催された宴会は、森中に響く程賑やかなものだった。


女性たちが、酒やら食べ物を持ってくる。


本当に綺麗な人種だ。


見惚れているとセルフィーが言う。


「祖母の料理は力が付く」


祖母?!

想定はしていたが、オレの周辺を固める方々は百越えばかりであった。


 ふと、六十で背が縮み、横に広がって行った親を思い出した……


「三十になる前には手料理の一つくらい覚えなさいね」


ほっ、セルフィーは年相応なんだな。


 そして、もう一人?一頭?

さっきからずっと寄り添うものがいた。


「なんでこのグリフォンはここにいるんだ?」


「ずっとリクトさんに寄り添っていたんです。危害を加える様子はないってセルフィーが言ってました」


「言い伝えには、グリフォンを使役したものがいたと言う」


「神格化されたのもそれが始まりだったのだよ。

それより、どうかな。うちのセルフィーをもらってくれる気はないか?」


突然のセルフィー父のセリフに戸惑う。


「ダメか?セルフィーはまだ若い。世界を回り見識を広める必要があるんだが」


 横で聞いていたルミナとセルフィーがそわそわしだす。

さすがのセルフィー父も、酒の席での話半分のようで安心した。

そもそも、人間との交わりに問題はないのか?


「さて、リクト殿。本題に入ろう。その飛行体についてだが、先程も言ったグリフォンを使役した英雄も持っていた。伝承と異なる点もあるが、リクト殿はその方と同じ大きな役割があるのだろう」


「蒼の山脈を越えると、人の寄り付かない地域があるらしく、山脈で囲まれた絶界。

伝承では、英雄はそこから来たのだと」


村長でさえも伝承だと言う程の、大昔のことらしい。


「なら、そこを目指すのも良いかもな」


 大昔のことで、今となっては何もないだろが、漠然と伝承の軌跡を追ってみたくなった。



「リクトさん。眠れませんか?」


「いや、少し散歩をな。酷く荒れてしまったな」


「リクトさんのおかげでこれまでの被害で収まったんです」


「なぁ、オレはこの世界に来て、王都に行くことを目的にして旅を始めた。

プライの情報も入ったし、寄り道も良いかなと思う……

しかし、今回はルミナを危険に晒してばかりだった。

本当に申し訳ない」


 今回を振り返りながら話をするオレを、ルミナは黙って見つめ聴いていた。

それでも、この先ルミナと旅が出来たらとも話す。


オレは考えていた。

負い目もあるが、それ以上に仲間との旅が嬉しいと。

こんな夜をまたルミナ達と味わいたいと。

今は思ってしまっている。


 黙って頷くルミナ。

その目には何か決意の様なものを秘めていた。


「もっと強くなりたい。

ルミナやみんなを守れる様に。

ラルド達に会った時、恥ずかしくない様に」


「リクトは強い。それも規格外に」


 木陰からセルフィーが出てくる。


「誰かを守る強さを求めるのは賛成だな。

改めて、リクト達と共に旅に連れてってくれ。

もちろん、将来を考えてのことでもいいが」


と、冗談を交えるセルフィーに、ルミナが反応する。


冒険って良いもんだな。



 身体を休め、復興を見守り数日。

旅立ちには、グリフォンも付いて来ることになった。


「なんだ?背中に乗れってことか?」


 エルフ達の計らいで、グリフォンには三人掛けの鞍が取り付けられていた。

グリフォンの背中は毛繕いされ、ふかふかで最高の乗り心地だった。


 里の皆に見送られ、三人と一頭は空へと舞い上がる。


目指すは未開の山脈だ!!

ご覧いただきありがとうございました。

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