仲間との冒険
紹介
ロトスの英雄リクト
ロトス領主オルシャンから英雄な証たるタグを発行されている。ヒドラの功績を讃えられ授与。オルシャン家は国内でも指折りの貴族で、英雄指定権を有している。このタグがあれば、国内どの街でも融通が効く。この上には、国王からの国の英雄を残すだけ。それほどの功績をリクトは成したことになる
セルフィーとエルフ達が再会を果たす最中、ルミナの意識が戻った。
「リクトさん?はぁわっ、どうしたんですか急に。苦しいです」
無意識にルミナを抱きしめていた。
この世界に来て、命をかけ、狩って戦ってきた。
しかし、身近な人の危機を目の当たりにして、始めて気がつく。
ゲームじゃないんだ。
なにが守ってやるだ。
自分のことなら、新しくニューゲームくらいの楽観をしていた。
だからこそ蛮勇も出来た。
しかし、他人はどうだ?その先が想像出来てしまった。
ルミナがいない先を想像してしまった。
「すまん。ちゃんと守ってやれなくて……」
涙を堪えながら、ルミナの安全を心から感謝した。
「私は大丈夫です」
状況を飲み込んだか、ルミナもそっと抱きしめ返す。
セルフィーが話をつけたらしい。
「心配はしたが、里の皆が魔法を使った以上大丈夫だ。
それより、リクトは案外打たれて弱いのか」
セルフィーが情け無い顔をするオレを見て笑う。
みんなして笑いあったところで、やっと落ち着いた。
大事をとって、ルミナを背負い森を抜ける。
森は入り組み悪路のため、背負ったルミナは激しく揺れる。
「んっ
ふぅっ
あっ」
段差を越える度に、ルミナの息を殺しながらも漏れ出た、気の抜けた声が耳元に吹きかかる。
自分の耳が熱くなるのを感じた。
ルミナ自身も、その漏れ出す声に恥ずかしさを感じているらしく、ただ黙ってしがみついていた。
「詳しいことは、里に入ってからになるが、どうやらグリフォンの異常行動が見られているらしい」
セルフィーが緊迫した様子で喋り出す。
オレとルミナは一気に冷静になる。
しばらくして、エルフの里に到着した。
想像通りの自然との共生を、体現するような暮らしぶり。
セルフィーの家へと案内され、ルミナの看病に入る。
翌日、族長のところへ出向いていた。
ロトスでの件とオレが"神の鏡"持ちであることが伝えられる。
そして、蒼の山脈でなにが起きているのか聞かされ。
ことの発端は、ヒドラだった。
この時期、南の海から大量の渡鳥がこの地を通過する。
だが、ヒドラ出現でその鳥達はほとんど食べられ、山脈の食物連鎖が維持出来なくなってしまったのだ。
「たしかに、文献にもあったな。イワシドリだったか。群れることで種の存続を図るというものだったか」
そして、このイワシドリはもう一つ世界の食物連鎖に重要な役割があるらしいが。
「鳥魔物は分かります。ですが、それでグリフォンが山脈麓まで来る理由になりますか?」
エルフ達も長い歴史の中でも異例。
この里は結界で守られているが、グリフォンさ抑えられぬだろうとのこと。
連日、グリフォンと戦うか逃げるかの議論になっているらしいが、逃げることでほぼ固まっているらしい。
一つ問題があるとすれば、グリフォンは縄張り意識が非常に強く、一度縄張りになった地域は二度と戻らないとのことだ。
「それは里を捨てることになります」
セルフィーの強い訴えも分かるが、グリフォンの脅威を目の当たりにした直後だと、判断に迷うのも頷ける。
里の会合が終わり、安静にしているルミナのところへ急ぐ。
「リクトさん。心配しすぎです。でも、嬉しいです。
セルフィーのお母様に回復魔法をかけてもらいました。セルフィーありがとう」
「母の回復魔法は良く効くと評判だからな。まだ休んでいていいぞ」
「昨日はずっと寝ていたので、今日はしっかり働きます」
ルミナの調子も戻り張り切っている。
特に昨晩の夕食のレシピを教えてもらうんだとか。
オレも、いざに備えてプライの性能を再確認する。
あれは確実に物理法則を越えていた。
ヒドラ戦では的が近過ぎて気が付かなかっただけか、プライⅡの性能か。
「法則と言えば、弓には元々そういったちからが付与されていたとか。相変わらず、プライはガイドがないから分からないな」
突如として、里の警報が鳴り響く。
グリフォンが襲来してきた。
逃げ惑うエルフ達。
なぜここが分かったのか。
ピンポイントで里を襲撃してくる。
セルフィーと戦士長が即座に立ち向かっていく?
「神木のウロから地下へ。戦士はグリフォンを食い止めるぞ!!」
戦士エルフ達は良く善戦している。
たしかに、グリフォンは強敵だが、村全体でかかれば倒せる魔獣だった。
しかし、斥候の一体に手こずっている間に、次々にグリフォンが出現する。
「これ以上持ち堪えられない。後退するんだ」
「いや、引くな!!押して戦えー!!」
セルフィーが一声し、指揮を持ち直す。
が、やはり神格化しているだけあり、グリフォンの討伐を躊躇う様子が見られる。
ルミナとセルフィー母を地下へと逃し、遅れながら参戦する。
「エルフが討伐を躊躇うのにオレが殺していいのか?」
弓を構えるも、エルフ達の戦い方に違和感を感じ躊躇する。
しかし、戦闘に余裕がないのもたしかであった。
威嚇矢として鳥型魔獣の矢を放つ。
なにかがおかしい。
グリフォンはたしかに統率取れた状態で襲って来ているが、どこか脅迫めいた焦りが伝わってくる。
「この魔獣がなにを怖がることがあるのか?」
山脈の奥から異様な気配を感じる。
あそこにはなにがあるのか。
防戦ではあるが、エルフも大勢を立て直しつつある。
エルフの魔法力の凄まじさが、惜しみなく発揮されている。
セルフィーを上回る使い手が多数見受けられが、セルフィーの勇敢さがエルフの力を導いているようだ。
「領主の見立ては正しかったのだろうな」
率いる者の風格を備えていた。
戦いの終わりを感じ始めた頃。
空の彼方から、けたたましい鳴き声が響き渡った。
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