ロトスの英雄の旅立ち
紹介
神殿
世界各所にあるとされる創成期の建造物。
中には祭壇があり、土地によって古代文字や仕様は若干異なる。
しかし、そこに祀られるのはどれも同じ存在で唯一神と思われる。
古の転移者も神殿由来のチカラを操り、世界の技術革新を行った。らしい。
再度領主エアルドに呼び出された。
「フェイから聞いておる。三人ともそれぞれ旅の目的があると?
その上で、改めて言おう。セルフィー、ロトスエルフの代表になってはくれまいか?
ルミナ、フェイの友人としてとどまってはくれまいか?
リクトよ、このロトスに仕えてはくれまいか?」
オレを始め、皆首を振る。
「はぁ、わかっていたことだ。これ以上わしに引き留める言葉はなくなった」
咳払いをすると、厳格な声で続ける。
「リクトよ。其方をロトス英雄とする。世の平和のためこの国での自由行動を許そう。
また、英雄リクトに随行するものも同様にパーティーとして振る舞うことを許可する!!これを持て」
領主から、英雄の証たるタグを授かる。
「なんだ?もう行くのか?」
「世話になった」
「そうだ、リクトは王都のケインマスターに会いに行くんだよな?アイツは手強いぞ。心してかかれよ」
世話になった皆に挨拶を済ませ、領城を後にする。
街の人々は魔獣襲撃以来、平穏に暮らせている様だ。
街を出る前に、歓楽街とパーズの工房に立ち寄った。
「おう、あんたか。もう出るのか?これは注文されていたアームとチェストだ。あと、2人の嬢ちゃんにも」
「さすが仕事が早いな。宴の席で渡したのによく覚えていたな」
「上等な酒は悪酔いしねーのよ。また、この街に来たら顔出しな。そん時には、バリスタ強化されてるからよ」
城門付近には、多くの見送りが駆け付け、中にはセルフィーの兄夫婦もいた。
城内外へと騎士団が整列している。
「ん?あれはギールか?」
ギール程の力量だ身分剥奪とは言え、ロトスのためにも必要な存在なのだろう。
城門上部から、指揮官の号令がかかる。
「ロトスの英雄に礼!!」
馬車の中からロトスが遠のいていく。
こうしてこの街での旅は一応の終わりを迎えた。
王都へ向かう前に、一度西へ戻り蒼の山脈に行くことにした。
セルフィーの里帰りと伝承の話を聞くためだ。
街道を降り、道なき道を進む。
神殿からロトスまで踏破しているオレや、セルフィーには問題ない道すがらであったが、ルミナにはきつそうだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。ですが、お二人の足手まといになって申し訳ありません」
「なに言ってるの。ルミナのおかげで、旅をしながら美味しい料理が食べられるのよ
ゆっくり進みましょう」
そう。
実際のところ、このパーティーはなかなかバランスが良いのだ。
進行が遅くとも、旅の最中安心して食事が出来ることは、なによりも疲労回復になる。
「旅の中で、戦闘は一瞬だ。でも、それ以外はルミナが頼りなんだ。気にせず休んでくれよ」
わかりやすく、ルミナの表情が明るくなる。
「ここから先は山脈に入る。魔物が出やすくなるから、気をつけて進むよ」
やはり、人里離れ自然の中に入り込むと魔物の出現率も上がる様だ。
「そう言えば、南の方の湖で大蛇と戦ったな」
野営中、地図を見ながら思い出す。
「大蛇?まさか、ホワイトサーペントか?」
「分からんが、白かったな。木を薙ぎ倒す程のデカさだった」
セルフィーが呆れた表情をする。
「ヒドラを倒した男になに言うかだが、あれも化け物だぞ。しかも、そのサイズなら成体だったろうに」
オレは苦笑いを返す。
「エルフの里に行くまでに、注意しておくことがある。山脈には、多様な鳥魔物が棲みついている。その中でもグリフォンだけは絶対に避けなくてはならない」
グリフォンはエルフの中で神聖視されているらしい。
と言うか、太刀打ち出来ないが故に畏怖しているのだと言う。
「世界にはエルフの里は多数あると聞いているが、蒼の里は特に遠距離魔法に特化している。これは、空中戦に必要な進化と言えるだろう。鳥魔物に出会ったらルミナはすぐに木に隠れろ」
セルフィーの話は非常に有益だった。
まだまだ知らないことがある。
ロトスの図書館で得た知識も重要だが、身を投じて得る知識もまた、重要であることに気付かされる。
「仲間との旅も悪くないな」
呟いた言葉に、2人が反応する。
「そうですね」
「そうだな」
二人をしっかり守らなきゃな。
ヒドラや大蛇の話を聞き、自分の中に自信が芽生えていた。
森深くを抜け、ひらけた高台に出る。
早速のお出ましか。
鳥型魔物が襲ってくる。
さすが、セルフィーはしっかりと対応する。
オレも空中戦に慣れておかないと。
ロトス星泉でのプライ進化から、製造矢の本数と速度が上がっていた。
「プライお前の進化試させてもらうぞ」
外す気はないが、矢数を気にしなくて良くなったのはありがたい。
いままでよりも攻めた迎撃が行える様になった。
「リクトさん。さすがです」
「そうだな、空中を舞う魔物を射るとは、私の魔法よりも精度が高いのではないか」
連携は悪くない。
空中戦の感触も上々だ。
このまま安全に里まで行こう。
そう思った矢先、グリフォンが現れた。
「手を出すな、逃げろ」
一瞬のうちに、ルミナを鷲掴み連れ去って行く。
「ルミナー!!!!」
凄まじい速さで遠くに飛行して行く。
ダメだ、このままでは射程外。
どころか見失ってしまう。
その時、プライが強い発光をしながら、矢を精製する。
鳥型の矢で一縷の望みをかけ放つ。
到底考えられない様な遠的。
しかし、矢はどこまでも真っ直ぐに空を駆ける。
物理法則はどうなってる?
と思うが、どころじゃない。
矢はグリフォンの羽をかすめ、ルミナが空中に投げ出される。
「ダメだ、遠すぎて追いつかない」
ルミナの落下点辺りで魔法が光る。
セルフィーは何かに気が付いた様子で、走り出す。
たしかこの辺りだったはず。
落下点にはルミナが外傷なく横たわっていた。
「いるんだろう?セルフィーだ今ロトスから帰った。この娘は私の仲間だ。本当に助かった。」
森にセルフィーの叫びがこだまする。
しばらく、視線を感じたが警戒心は解かれ、木々の茂みからエルフが現れた。
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