伝説の魔獣ヒドラ
紹介
セルフィー 蒼の山脈麓にあるエルフの里出身
女性 20代の見てくれ
容姿 銀髪にロングヘアー。リクトより少し背が低いくらい
性格 男勝りな言動で活動的。人族に対して懐疑的
特技 魔法を併用した魔剣技。炎槍
弾圧が進む中、兵士が幼い少女に手を引っ張り上げた。
気が付けば、セルフィーを抑えていたはずのオレが、兵士を殴り飛ばしていた。
「貴様は弓使い。やはり貴様が首謀者か」
ギールが兵士を差し向ける。
「目の曇ったカスどもが。ここにいるのは紛れもなく民衆だろう」
一触即発だった。
白兵戦の経験はない。
どうする?
セルフィーが乱入する。
鋭い剣捌きと、矢の様な魔法で兵士を薙ぎ倒していく。
「下等な蛮族風情が」
ギールがレイピアを構える。
圧倒的な気迫。
空気がヒリ付き、息苦しくなるのを感じる。
数号撃ち合うとセルフィーが手をついた。
「この程度で叛逆を語ろうとは。不愉快だ」
抑えていた怒気が漏れ出す。
「なんだ?なんの気配だ」
放たれる気配に気付き、ギールと視線がかち合う。
その時。
城外から爆音が響く。
「今度はなんだ」
「城外に魔獣出現との報告あり!!」
伝承の魔獣が出現した。
「くそ、貴様らこれを狙ったか」
ルミナがこの機に乗じてエルフを逃す。
「貴様ら」
攻撃はオレに向かってくる。
激しい剣戟が襲う。
が、見切れる。
「なにぃ?!」
距離をとり、プライに弓を召喚させる。
戦闘として、人を目がけ弓を構えるのは初めてだった。
怖い……
自分の中の倫理観が邪魔をする。
構えた以上、集中しなければ隙を突かれる。
真剣だった。
威嚇の矢を放つ。
強化された矢は、ギールを外れる。
轟音と共に、衝撃波がギールの髪を薙いだ。
ヘタレ込むギール。
「こんなことしている場合じゃないだろう!!魔獣を止めに行くぞ」
そう言って、セルフィーとルミナに合図し城壁に向かった。
城壁に着くと、それは嫌でも目に入った。
城壁に届く程の巨大なヒドラだった。
「でかいっ!!」
三頭を持つヒドラの額には、湖で会った大蛇の十数倍の核を宿していた。
城壁から矢を放つ。
効果はある。
が、傷口はすぐに再生していく。
「三頭同時に破壊しないと再生し続けるわそれにしても、伝承よりもずっと大きい」
セルフィーが到着した。
そして、城外には続々と騎士団が集まる。
その中にはギールの声もあった。
戦闘は続き、夜へと突入した。
地上と城壁からの攻撃が始まるも、上手く連携が取れていない。
ギール指揮の地上部隊が前に出過ぎるため、上からの攻撃は被害を招いてしまうのだ。
どうやら、城壁兵は優秀そうな指揮官がいるが、タイミングを失っている。
「防戦の経験はないのか」
「誰だ貴様は?ん、先程先制したのはお前か」
「邪魔をするな。ただの冒険者は下がってろ」
取り巻きがうるさく邪魔をする。
「それどころじゃないだろ。あれは、三頭同時に破壊しないと討ち取れない。どうにか連携の手段はないのか」
こちらの言葉に見向きしない。
このままじゃダメだ。
地上の兵士がバタバタと薙ぎ倒されて行くのが見える。
「セルフィー、なにか有効手段はないのか?弱点とか」
「あいにく、私も伝承の話しかわからない」
ダメだ。
打つ手ないままに兵は疲弊していく。
何かないか、何か。
大蛇との一戦や文献のことを思い出し、糸口を探る。
ん、型はどうあれ蛇だよな?
「指揮官!!こちらに注意を引き付けたら、どれくらい引き受けられる」
「なにを言っている。そんなこと出来るわけないだろ」
「いや、しかし引き付けることが出来たらバリスタが起動できるか……」
「今なんて言った?バリスタ?使用出来るのか?」
「あぁ、バリスタ技師から再調整がなされたと話は上がっている」
パーズめ。
本当にあの蒼金が必要だったのか。
それも、渡して数日だぞ。
パーズの仕事ぶりに感服する。
「バリスタ起動までどのくらいかかる?」
「魔獣の出現以来、技師は招集しているはずだ。あとは、使用したことがないから誰も分からん」
肝心なところがないが、可能性は見えた。
「直ちにバリスタを起動させろ。時間はこちらで稼ぐぞ。誰か、炎を操れるものはいないか」
「私が出来る」
セルフィーが呼応する。
「火球を空に打ち上げることは出来るか?」
「あぁ、もちろん」
「では合図をしたら放ってくれ。指揮官!!この篝火を消してくれ。少しの間で良い」
「なにを言っている。そんなことをすれば、こちらはおろか、地上の兵も暗闇だ」
「一瞬でいい。早くしろ!!」
気圧され、篝火を消すように伝令が飛ぶ
よし、これでいい。
あった。
ただ、チャンスは一度。
これを外せば後がない。
「プライ。これを矢にしてくれ」
初めてのスライム戦で獲得した結晶をプライに再成型させた。
思い出したことが二つ。
蛇は熱感知に長けた器官があること。
これは大蛇も同様だった。
もう一つは、文献での情報だ。
ごく稀に魔物からでる結晶は、反対の属性魔力に触れると魔力爆発が起こるというのだ。
「今だ、やってくれ」
篝火が一斉に消え、火球が空を舞う。
ヒドラの注意が火球に集中する。
この世界に来てから、全てが一か八かのギリギリばかりだ。
もしかしたら、現世でもそうだったのかも知れないな。
次は。
といつのまにか反省を言い訳にしていたのかもな。
雑念とも言えるものが湧き出ていた。
しかし、集中していないわけじゃない。
全てが良く見えている。
ここだ!!
放たれた矢は火球に差し掛かる。
先端から導火線のように、炎が矢を這い結晶に到達した。
周囲の音が吸収され、静寂が一瞬
その刹那激しい爆発音と閃光が夜空を駆る。
皆が目と耳を塞ぎ崩れ込む。
最も至近距離でこれを食らったヒドラはどうだ?
高音の叫び声で哭きながら、もがくもがく。
「今だ、篝火を焚け。一斉にかかるぞ」
夜空に花火の様に光舞う中、ギールと目が合う。
流石はギールだ。
崩れ込むことなく立っていた。
レイピアを強く握り込むのが見えた。
悔しそうな顔と共に。
そこからは戦況が変わる。
地、城共に互いを意識連携が取れていく。
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