表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の花園  作者: Tsuyoshi&松山亮太
第一話『ラガーマン五十嵐太陽、誕生!』
9/10

#9

 夕方、太陽は公園のブランコに乗って、キィ・・・・・・キィ・・・・・・と静かに揺れていた。先日、彼に助けられた子犬が、太陽の靴をクンクンと嗅いでいる。


「もう諦めよっかな・・・・・・華凛ちゃんの事」


 子犬が寂しそうに呟く太陽を見上げた。太陽は子犬の頭を優しく撫でた。


「そいや、お前、まだ名前決めてなかったな。んー、そうだな・・・・・・ナツとかどうだ? ここなつき公園だから」

「全く、センスないわねぇ」

「・・・・・・!!」


 突然の声にハッとして見上げると、そこには華凛の姿があった。太陽はバツが悪そうに彼女から視線逸らす。


「な、なんだよ・・・・・・またいちゃもんつけかよ」

「そのワンちゃん、太陽が助けたんだってね。優ちゃんから聞いたよ」


 華凛は子犬に近づき、しゃがんで頭を撫でる。


「だから何だよ・・・・・・」

「いいとこあるじゃん」

「え・・・・・・」


 ぶっきらぼうに答える太陽を見上げ、華凜がほほ笑む。思ってもいなかった彼女の優しい笑顔に太陽はドキッと胸を高鳴らせた。


「ねえ、もう諦めるの?」


 華凛は立ち上がって太陽に背を向ける。


「え?」


 突然の問い掛けにキョトンとする太陽に振り向く事なく、華凜はそのまま続けた。


「本気で好きだっていう気がまだあるんだったらさ、最後まで貫き通してみたら?」

「・・・・・・!!」


 含みのある華凜の言葉に、太陽は驚いた顔で彼女の背中を見つめた。



 数日後。快晴の青空の下、桜華学園の第二グラウンドではラグビー部員達が優大を先頭に列を成して内周をジョギングしていた。練習後のクールダウンだ。


「よーし、今日の練習はここまで。グラウンドに挨拶じゃ!」

「はい!」


 優大の号令でジョギングを終えて部員達が大声でグラウンドに挨拶する。

ベンチに座っている華凛は新入部員登録表と書かれたノートにペンで新入部員の名前を書き込んでいる。しかし、その中に太陽の名前はない。


「よし、新入部員はこれで全員か」


 優大が汗を拭きながら華凛の前に来て、少し寂しそうに呟く。


「あいつ、今日も練習来んかったの・・・・・・」

「もうあんな奴どうでもいいわ。結局根性無しなのよ。大事な約束なんか、平気で破る奴なんだから・・・・・・」


 華凜は太陽の話題に眉をひそめてノートをパタンと閉じた。


「大事な約束? ワシは、ちと期待しとるんじゃがの。あの稲妻のような鋭いステップ・・・・・・あんなに打たれ強くてタフな奴はそうおらんぞい。それに動物が好きなやつじゃ!」


 しかめっ面の華凜と目を輝かせて話す優大の二人のもとに近づく足音が一つ。


「まあ・・・・・・でも、思いは行動で表すもんでしょ?」


 華凛が腕を組んで顔を膨らます。それと同時に、止まる足音、そして、 


「たのも~~~~~~~!!」


 太陽の威勢の良い声がグラウンドに響く。華凛と優大が驚いて声のする方を見る。


「た、たのもぉ? て、あんた・・・・・・太陽⁉」


 二人の目の前には、爆発金髪アフロをバッサリと短髪に切ったジェットモヒカン姿の太陽がいた。もみあげから襟足を刈り上げトップは長めの金髪が剃り立つ様がまるで燦燦(さんさん)と照る陽光のようだ。太陽は優大に向かって、バッと頭を下げる。


「俺に、ラグビーを教えて下さい!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ