#7
翌日、桜華学園一年五組の教室では、女子生徒達が机を囲んで雑談している。教卓前の席に座る華凛はラグビー雑誌を開いて熱心に読んでいた。そんな彼女の背後から女子生徒が二人、雑誌を覗き込んできた。
「華凛は本当にラグビー好きだよね。いつも研究熱心だもん」
「まーね。だって男達があんなに体張ってゴールを、目標に向かって突き進んでいくのよ? 最高にカッコイイじゃない」
クラスメイトの言葉に、華凜は瞳を輝かせながらラグビーの魅力を語る。そんな華凜に、クラスメイトの一人が微笑みながら話を切り出す。
「うん。あ、そういえば―――」
「―――ええっ!?」
桜華学園の校舎に華凜の驚愕した声が響いた。
「アイツがラグビー部に!?」
華凜は驚いた顔でクラスメイトの二人に聞き返す。二人は頷きながら華凜に答えた。
「本当らしいよ」
「うん、さっき廊下でキャプテンに入部届け出してるとこ見たって」
「冗談じゃないわよ。誰があんな奴・・・・・・」
「あ、華凛!」
華凜はムッとした表情で勢いよく立ち上がり、呼び止めようとするクラスメイトを尻目に走って教室から出て行った。
その頃、一年七組では太陽が教室中央の窓側の席で、片肘をついて外をぼうっと眺めていた。
それから太陽は机に寝そべり、頭を抱える。
「―――とは言われたものの、はっきし言ってやってく自信ねえ・・・・・・」
そこに勢いよく教室のドアが開いて、華凛が太陽を大声で呼ぶ。
「五十嵐太陽!」
太陽はビクッと跳ね起き、他の生徒達も驚いて彼女に注目する。華凛はキッと太陽を睨みつけていた。太陽はそんな華凛と目が合い、ビクビクしながら彼女に声を掛ける。
「よ、よう・・・・・・」
華凛はそれを無視して、ズカズカと教室に入って来た。思わず彼女に道を開ける生徒達。
「どういう心境の変化かしら?」
太陽の前に威圧感を剥き出しで立つ華凜は、バンッと太陽の机に両手を叩きつけた。
「ぜーったいに、認めないからね!」
「な、なんだよ、俺がどの部活に入ろうが勝手だろ・・・・・・」
太陽は華凜から視線を逸らし、再び片肘をつく。
「伝統ある桜華学園ラグビー部に、アンタみたいな根性無し・・・・・・これーっぽっちも必要ないんだから」
「なんだと! 実力も見ねーで決め付けんなよ」
華凜の言葉にカチンときた太陽は、立ち上がって彼女を睨みつけた。そんな太陽を華凜は更に煽る。
「実力? ふ~ん・・・・・・じゃあー、見せてもらおうじゃない」
「おお、どんとこいっつーの」
太陽と華凜は共に激しい火花を散らして睨み合っていた。