#5
彼女への告白の時の思い出と共に、太陽の頬を涙がツーっと流れた。
「俺が華凛ちゃんを呼び出しておきながら、告白する勇気なくて逃げ出してしまったばかりに・・・・・・今やこの有様だ」
自分を踏み倒してツンと冷めた顔の華凛を想像した太陽は、顔を振って涙と共に雑念を払う。
「うう・・・・・・やっぱ、男は勇気と決断力。そして、タイミングだな」
そう呟いているところに複数の下卑た笑い声が聞こえてきた。
「ワハハハ・・・・・・間抜け過ぎる、こいつ」
「ん?」
太陽が声の方へ注目すると、公園が目に入る。
夕暮れの公園では不良が三人、しゃがみ込んで何かを取り囲むようにしていた。
「おい、動くな」
「お座り。待て」
「ハハハ・・・・・・」
太陽が不良達の背後に近づいて行くと、彼らは子犬を囲んで悪戯をしていた。
「そこもっと上だって」
「待て、焦んなって」
「あはははは・・・・・・オカメ犬誕生だぜ」
自分より大きな生物に囲まれて、子犬は怯えて尻尾を丸め震えていた。しかし、不良達はそんな子犬にお構いなしと言わんばかりに、容赦なく顔にマジックでオカメの様に落書きしている。
「次は鼻ヒゲだ!」
マジックを持つ不良の背後に立ち止まる太陽。彼の爆発頭の影に不良が気付く。
「ん?」
彼が気付いた瞬間、振りかぶる太陽の足が不良の尻を蹴り飛ばした。
「・・・・・・!? 何すんだ、テメェ!」
仲間が不意打ちを喰らい前のめりになったのを見て、太陽にいきり立ち睨みつける二人。しかし、太陽は怯まず、頑として不良達の前に立ちはだかった。
「ヤメロ。弱いモン虐めて楽しむな!」
しゃがんでいた不良の一人が立ち上がり、
「はぁ? うるせ、ゴラァ!」
と、太陽の頬を殴る。だが、太陽は踏ん張って体勢を崩さず、殴ってきた不良の肩を掴んで彼の鼻に頭突きで反撃した。
「んなヘナチョコパンチ、痛くもねえんだよ!」
頭突きを貰った不良は鼻血を噴き出して後ろに飛ばされる。
「オラァ!」
そこに先程太陽に尻を蹴られた不良がとび蹴りで太陽に不意打ちをやり返す。蹴りは太陽の背中に直撃した。
「どはっ」
これには太陽も踏ん張れず地面に倒れ伏せてしまった。これが好機と不良達は倒れた太陽を取り囲んで四方八方から蹴りを入れ続ける。
「オメェなんか、ヤンキーの端くれにもねぇくせに! ナメんな、この金髪ボンバーが!」
太陽はうずくまりながら、彼らからの執拗な攻撃を耐えていた。
その頃、公園の前を優大が小動物用のケージを大事そうに抱えて通りかかっていた。ケージの中にはつぶらな瞳をした愛らしいゴールデンハムスターがじっと丸まっている。
「おお~、大丈夫でちたかぁ、サクラちゃん。んー、さっきはお腹がグルグルしてきつかったでちゅねぇー。でも、病院でお薬貰ったからもう大丈夫・・・・・・」
ハムスターのサクラを愛おしそうに見つめ、その顔に似合わない赤ちゃん言葉で話し掛ける優大。そんな彼の耳に子犬が激しくキャンキャンと吠える声が聞こえてきた。
「んん? なんじゃ?」
鳴き声は公園の方からしている事に気付き、優大は公園に立ち寄る。すると、そこには不良達に袋叩きに蹴られている太陽がいた。




