#3
快晴の空の下、華凜の驚く声が響く。
「えぇっ! 見学!?」
優大は笑いながら、猫の首を掴むように太陽の首根っこを摘まんで華凜の前に突き出した。
「コート近くでためらってたから連れて来たんじゃ。見学の間頼むぞ、華凛」
(か、華凛!?)
「えー、でもこいつ・・・・・・」
華凜は唇を尖らせて、あからさまに嫌そうな表情を見せる。
(呼び捨てだとぉ! このマウントベアーめ、華凛ちゃんとどーゆー関係だ⁉)
華凜と優大が何やら話しているが、太陽はそれどころではなかった。二人の距離感が気になって、彼女達の話が耳に入ってこない。
「え? 前からの知り合い? なんだよ、それならワシにも紹介してくれや。水臭いのぉ」
「ん~、ごめんね。優ちゃん」
(カーーーーーー!!)
都合の悪い言葉は聞こえてくるもので、優大を親し気に呼ぶ華凜の言葉に、太陽の脳天に雷が落ちる程の衝撃を受けた。『優ちゃん』の文字が何度も繰り返し反芻され、太陽は力なくその場に倒れ込む。
「ん? どうした、一年坊」
「つ、つまりこうゆうことか・・・・・・」
太陽はヨロヨロと起き上がり、隣り合う優大と華凛をじっと見つめる。
(この熊大将をブチのめさない限りは、華凛ちゃんが俺に振り向いてくれることはねえってわけだ・・・・・・)
優大と華凛はブツブツと独り言を呟く太陽を見て、頭上にハテナマークが浮かぶ。
「ならば!」
太陽はふいに優大の隣に立って、何を思ったか背比べを始める。しかし、明らかに二十センチ近く差がある事にショックを受ける。しかしまだ太陽は諦めない。続いて優大の横腹を掴もうとするが、筋肉に覆われている腹は掴めずに焦る太陽。
(な、なんだ、この腹!? 硬くて掴めねぇ・・・・・・!!)
優大は太陽の妙な行動に焦って、彼を見下ろしながら目で追う。
「ど、どうしたんじゃ急に!」
太陽は優大の顔を見上げて息を呑む。そしてそのまま、ゆっくり五、六歩下がって行く。
(恐れるなぁ・・・・・・太陽! 春は目の前だ)
優大は太陽の奇妙な行動に首を傾げて後ろの華凛を見る。
「なんじゃ、変な奴じゃのお」
「そ、変な奴なの! だから早く・・・・・・あっ、優ちゃん!」
優大の背後に突進して来る太陽が目に映り、華凜はハッとして優大に声を掛けた。
「ん?」