#2
第二グラウンドでは、ラグビー部の激しい練習が行われていた。鬼気迫る掛け声を上げながら、激しいスクラムをする部員達。スクラムを組むフォワードの後ろに控えるバックス陣。スクラムからバックス側に掻き出されたボールを鮮やかなパスワークで回している。
場外に出たボールをラインアウトからスローワーが放つ。それをリフター二人に支えられたジャンパーが高々と飛び上がり、ボールをキャッチする。
「ナイスキャッチ!」
ジャンパーの動きに合わせて、華凛が活き活きとガッツポーズをしながら部員達に明るく声掛けをしていた。
(たく、あんなガツガツしたスポーツのどこがカッコイイんだよ・・・・・・)
グラウンドから少し離れた草むらからひょっこり顔を出す太陽。筋肉の鎧を纏っているような強靭な肉体のラグビー部員達を見て、身震いしながら草むらから出る。
(ぐ・・・・・・あんな人間離れた怪物達とグラウンドでデスマッチなんて御免だぜ)
すると太陽はエレキギターをケースから出し、一端のギタリストのように構えて格好つけた。
「やっぱ、男はロックだ。魂こもった曲作りゃあ、華凛ちゃんだって、きっと!」
しかし、ここで太陽はハッと首を傾げて気付く。
「・・・・・・いや、待てよ。それじゃ俺の自己満だけか? んー」
太陽は俯き考えながら、グラウンドの端を行き来する。その時、前を見ていなかった為に壁のようなにものにぶつかり、そのはずみで尻もちをついた。
「いで・・・・・・!!」
太陽は見上げて思わずギョッとなる。壁と思っていたのはラグビー部キャプテン、三年生の奥山優大の巨大な背中だった。
「おお、大丈夫かの?」
熊のような巨躯がゆっくりと振り返り、太陽に手を差し出す。彼の顔は身体に見合って熊のように厳ついが、表情は柔らかかった。太陽は差し出された手を掴んだ。
「お、おう。て、手ゴツいな・・・・・・」
「んん? キミ、もしかしてラグビー部の見学に? 一年生じゃの?」
優大がハッとした表情を浮かべて、太陽の肩に大きな手を乗せる。
「へ?」
「ワシはラグビー部キャプテンの奥山優大じゃ。見学なら結構結構! ささ、こっちじゃ」
優大はそのまま強引に太陽を引っ張っていこうとするが、太陽は慌てふためきながら、
「ち、違うっす。俺は・・・・・・」
「最初は誰だって恥ずかしいもんじゃ。大切なのはとにかく勇気を出して飛び込んでみること」
「はぁ? だー、かー、らー、俺はっ」
太陽は優大の手から逃れようと藻掻くが為す術もなくそのまま引き摺られて行った。