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甘えたがりのぐうたら彼女に、いっぱいご奉仕してみませんか?  作者: ひなた華月
第5章 働かざるもの食うべからず
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第18話 作戦決行前日


「おでかけ!?」

「仕事です」


 早速、姉さんのマンションでおこなわれた作戦会議の概要を叶実かなみさんに伝えると、彼女は万歳をしながら大はしゃぎした。


 だが、反応的に間違いなく誤解が生まれてしまっているので、僕は改めて叶実さんに説明する。


「いいですか? 出かける理由は叶実さんがちゃんと仕事をしてくれる環境に移動するためです。わかってます?」

「わかってる、わかってる。津久志つくしくんも一緒に来てくれるんでしょ?」

「まぁ、一応……僕は現場監督みたいなものですから」


 年上の女性の監視役なんて、できればしたくなかったものだが、ここまで来たからには頑張るしかない。

 しかし、叶実さんは楽観的と言うか、まるで遠足にでも行くようなテンションで先ほどからニコニコと笑顔を浮かべている。

 それが、僕から持ち掛けられた話で嬉しくなっているのか、今食べているお風呂あがりのバニラアイスが美味しいからなのかは分からないけど。

 とにかく、話を先に進めよう。


「それで、僕なりに叶実さんが集中して仕事ができそうな場所をいくらかピックアップしてきました」

「おおっ、さっすが津久志くん! お仕事が早いっ!」


 褒めてもらうこと自体は嬉しいんだけど、そのフレーズはなんだか自虐に聞こえてしまうのは、僕が意識しすぎているからかもしれない。

 そんなことを思いつつも、僕は自分のほうに向けていたパソコンの画面を叶実さんに向けながら説明する。


「僕としては、1番近くて使いやすい図書館がいいと思います。資料もいっぱいありますし、調べ物とかもすぐできますから。あとは、喫茶店やファミレスもありますし、レンタルルームなんてものも利用するって手はありますけど、これは叶実さんが好きなところを選んでください」


 今言った情報は、愛衣あいちゃんにも協力してもらって選んだものだ。

 一応、さりげなく図書館をオススメはしてみたものの、正直叶実さんが1番選びそうな場所はファミレスだと思う。

 メニューには叶実さんが好きそうな食べ物がたくさんあるし、何よりドリンクバーが存在する。

 僕も初めて姉さんに連れて行ったもらったときに、あれ以上の衝撃を受けたことはないってほど驚いたものだ。


「う~ん」


 しかし、叶実さんの反応は僕が思っていたのとは少し違っていた。


「ごめんね、津久志くん。せっかく色々と調べてもらって悪いんだけど、わたし、行きたい喫茶店があるんだ」

「えっ、そうなんですか?」


 もしかして、すでに叶実さんには行きつけの喫茶店が存在していたのだろうか?

 後から姉さんに聞いた話だけど、作家さんは愛衣ちゃんの言った通り、気分転換のために喫茶店などで仕事をすることが多いらしい。

 なので、叶実さんもそういうお店を持っていたとしても、不思議ではなかった。


「うん、だから、わたしが行きたいところでもいい?」

「ええ、それは構いませんけど」


 逡巡する僕だったが、別に僕がピックアップした場所を絶対に選んでほしいとは思っていない。

 ファミレスに行けないのは残念だけど、それを顔には出さずに返事をした。


「わーい! じゃあさ! 早速明日行ってみようよ!?」

「明日、ですか!?」

「うん! だって、明日だったら津久志くんもお休みでしょ?」


 叶実さんの言う通り、明日は日曜日なので学校は休みだ。

 けど、まさか叶実さんのほうから行きたいと言い出すなんて思わなかった。

 実を言うと、もっとゴネられるというか……外に出ることも面倒くさがったりしないかな、なんて不安に思っていたので、どうやらそれも杞憂に終わったようだ。


「じゃあ、明日は早起きしないといけないし、わたしもすぐに寝るね!」


 しかも、さらに驚いたことに、叶実さんはアイスクリームを食べ終わると、僕が言う前に洗面台へと向かいちゃんと歯磨きをして、ソファに寝転がったのだ。

 いや、この凄さは絶対に伝わらないと思うけれど、本当に凄いことなのだ。

 だって、いつもなら、このあとすぐにゲームを始めて、僕が寝る前にやっと歯磨きをやってくれたかと思うと、またスマホを触って別のゲームをしている彼女の背中に、僕が「あまり遅くまで起きてちゃ駄目ですよ」という小言を生返事であしらわれて、僕がため息をつくといういつもの流れが、完全に断たれてしまっているのだ。


「津久志く~ん。部屋に戻るとき、電気も消しといてね~」


 しかも、完全にご就寝される体勢になっている。

 まさか、僕は知らないうちに、叶実さんのやる気スイッチを押すことに成功したということなのだろうか?

 だとしたら、これはとんでもない働き方改革が行われた第一歩なのかもしれない。


 僕は自分が食べていたアイスクリームを急いで自分の口の中へと放り込み、就寝の準備をするのだった。


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