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人探しの戦闘機工  作者: 月読雨月
三章 紀光防衛戦
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1話 お婆さん

お婆さん



「お婆ちゃん、大丈夫かい? この坂きついから僕が荷物持って上がるよ」


帰り道の坂で、皐月が、見知らぬお婆さんに、声をかけた。


「そうかい。ありがとうね」


「いいよ。これぐらい当たり前さ」


「当たり前って言えるのはすごいねぇ。うちの孫なんて、泥棒と思われるのが嫌で、こういう事はできないって言っているんだよ」


「確かに、そういう考えもあるね。けど、僕には当たり前なんだ」


夕方、皐月がお婆さんの荷物を持ち、さすがに背負おうをしたのは、お婆さんが申し訳ないと言って、杖を突いて坂を上っている。私はそんな二人を後ろから見つめながら、皐月は勇気があるなぁと思っている。お婆さんと坂を上り、荷物をお婆さんの家まで持って行くと、お婆さんは、


「お礼もしたいから、二人とも一度家で休憩していってちょうだい」


「ありがとう、お婆ちゃん」


「え、私もいいんですか?」


「こちらのお嬢ちゃんのお友達なんでしょ。時間を取らせてしまったからねぇ」


「ありがとうございます」


私たちはお言葉に甘え、門をくぐった。でもお使いの間にこんなことしてていいのかしら? まあゆっくりしてきていいとは言われたけど。そう私たちは、文と紫波の手伝いで、買い出しに出ていた。皆の食事や、開発物のパーツ、果ては、訳の分からない、スライムの元と書かれたバケツ。本当にナニコレ? それらを持って縁側にお邪魔した。


「それにしても、立派な家ですね。ここで一人ですか?」


「ええ、でもすぐ近くに娘の家族が住んでいるから、大丈夫よ」


「そっか。でもそれならなんで一人で住んでいるんだい?」


「お爺さんとの思い出の詰まった土地だからかねぇ。婆はここを死ぬまで離れないようにしたいのさ。それにしても、ここからは見えないけど、海の近くのマンションに住んでいるんだから、ここに戻ってきてくれてもいいのにねぇ」


 「そうだね」


どうやら、山の向こうにあった、マンションに住んでいるようで、山のほうを向いて、指をさし、ため息をつく。少し、無駄話をしながら、ゆったりとした時間が過ぎていく。しかしその時間は、急な大音量のサイレンで、破られた。


「国籍不明機襲来。繰り返します。国籍不明機襲来。皆さん安全な建物の中に隠れてください」


「式、地図はすぐに出るかい?」


「ええ、出るわよ。皐月はすぐにでも出れるよう準備していて」


「お嬢ちゃんたち、此処にいたほうがいいわよ。外は危ないわ」


「でも帰らないと、皆心配するし、何より、私たちの家の方が安全なんだ。そうだ、お婆ちゃんもおいでよ」


って、なんか皐月が無茶なこと言っている!


「皐月、それは何と言うか、文に許可を」


「大丈夫だよ! だからお婆ちゃんも行くよ」


「婆はここでいいから、お嬢ちゃんたちもこんな危ない中出ていかないで、待っていたほうがいいわよ」


しかし、皐月は準備を進め、


「ごめんね、お婆ちゃん。僕たちは行かなきゃいけないんだ。だから、お婆ちゃんも、安全な、文の隠れ家に!」


「……本当に行くんだね?」


「うん」


「……分かったわ。じゃあ婆は、この家の一番安全なところにいるからね」


「心配しないでね。式はこれを持って、じゃあ行くよ」


と荷物を持ち、外に飛び出した。しかし、爆撃は無く、代わりに丸い機械が落ちてきた。とりあえず、苦無を機械の鋼の腕から射出して、球体に突き刺す。機械の所々に走っていた光が消えて、そのまま坂を転がっていく。マップを見ると、その丸い機械が、大量に落ちてきているのが分かった。


「あれ、どこかで見覚えが?」


そう皐月が言っているのが聞こえた。それを無視して、球体を見送ると、坂を上がって、掲示板に貼っている、謎の紙に触れ、

「転移開始」


とつぶやくと、私たちは機工研究所に飛んだ。

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