13話 脱出
脱出
か、かなり揺れているね。怖い、外での戦闘の影響だというのが音で分かる。私は部屋の隅で、頭を抱えている。
「ああ、いた。式、あまり動いていなくてよかったよ。さあ立ち上がって、この船から脱出するよ」
皐月が肩を叩いてくる。私は皐月を見つけると、安心して、
「う、うん。腰が抜けちゃってて、手を貸してくれない?」
「わかったよ」
手を引っ張り上げてくれる。震える足で一歩一歩とゆっくり歩く。
「ごめん、少し急ぐから、抱えていくよ」
へ? お姫様抱っこされ、廊下に出る。
「そ、そんなにヤバい状況なの?」
「うん、僕たちは負けたんだ」
「え、なのになんで攻撃が続いているのかしら?」
「いや、これは、多分この船を沈めようとしているんだ。何が目的か分からないけど、海を渡ってきた歩兵が乗り込んで、下の方で暴れまわっているっぽいんだ」
「じゃ、じゃあどうやって逃げるのよ! それに、動いている船に乗れる、海を渡る歩兵って何?」
「僕にもわからない。でも、今は紫波を信じて脱出するよ。っと着いた」
皐月が、ドアを12回叩く。するとドアが開き、中に入ると、少年少女が50人ほど集結していた。
「……よし、来たね。じゃあこの陣を起動させるし」
紫波は陣を起動させるために、電力を送り込み、私たちが入ってきた扉の前に、他の人たちが木箱等を置いてバリケードを作ってくれている。
「……出来た。これで、皆をあいつの元に逃がせれるし」
その言葉と共に、ドアの方から鉄の塊と、轟音が飛んできた。そして、ドアの一番近くで、陣に魔力と電気を注いでいた紫波に刀が刺さっているのが見えた。
「し、紫波様!」
雛が声を上げ、ドアの方向にかけていく。皐月も続こうと、足を出しかけたが、私たちの転移は始まった。




