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静寂・蛍・愛
耳が痛くなるくらいの静寂の中に舞い込んできた光。
戯れに差し出した指に止まる。
息をするように光が膨らみ、萎む。
どのくらいそれを見つめていただろうか。
ふわりと離れた光が無事に外に向かうのを見送った。
白んできた空の色にけしかけられるままペンを握る。
君と見た蛍の群れ。
「もっとも静かな恋文。なんて綺麗なんでしょう」
君はそう言って微笑んだ。
僕はそれを「愛してる」と訳したけれど本当は。
だって蛍がいつから光るか知っているかい?
「愛されたい」奪うだけのこの想い。
歪めて君に渡した罪はいつか知られてしまうのだろう。
それでも君が僕に微笑んでくれる夢を見て、
起きた僕が今日も君に贈るは歪めた恋文。




