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吸血鬼、恋、死
2xxx年、夏。
人間の人口を越える数の吸血鬼が人々の安息の時間を脅かしていた。
教会の鐘がなる。
「死が二人を別つその時まで、互いを愛することを……」
「誓います」
白い衣装に身を包んだ二人がそう答える。
「……うそ。そんな、そんなのって」
恋人の手をとり薬指に指輪をはめようとした瞬間。
その小指に赤く小さな炎症が起きているのを見つけた。それは、吸血鬼が彼をターゲットに選んだことを示していた。
嫌だ。この後婚姻届を出して、幸せな家庭を築くのだ。吸血鬼なんかに彼は絶対に渡さない。
悲痛な思いを嘲笑うかのように耳元でぷぅーんと羽音がした。




