花、季節、団子
花、季節、団子
「春だー!新生活だー!新人歓迎会だーー!!」
部活1やかましい先輩が両手を上げてなにかいうのを聞き流す。
「新人来るでしょうか?」
心配性の先輩が八の字眉毛で返す。
「おしとやかになれます!華道部!!これで全女子のハートはガッチリ!!」
ガッツポーズを決めてるとこ悪いですが
「……真実味がなさすぎる」
呟いた言葉を聞き咎められる。
「いやいや!おしとやかでしょ?」
八の字眉先輩を指差す辺り素直でよろしい。
心で答えただけなのに
「今なんか失礼なこと思ったね?」
と詰め寄ってくる先輩、怖い。
「そういえば!帰り道の和菓子屋さん!今日半額ですって!」
八の字眉先輩が空気を変えてくれる。
「よし行くぞ!前祝いだ!!」
さっきまで座ってた先輩がもうドアの前にいる。
「おいしいですよ?」
三色団子をじっと見ていると八の字眉先輩がニコニコと声をかけてくれる。
「冬はどら焼き!秋は練りきり!夏は羊羮!春は桜餅ぃ!!」
和菓子屋の落ち着いた空気のなかでそのテンションを保てるの、さすがです先輩。
しかも去年は「冬はぜんざい、秋はどらやき、夏はゼリー、春は三色団子ぉ」でしたよねぇ。
もちっと一口かじる。
噛み締める度に感じる甘さにここで食べたお菓子を思い出す。
華道部なのに、こんな思い出でいいんだろうか?
ふとおかしくなって笑いをこらえてると、先輩二人がどうしたんだ?と顔を見合わせる。
「先輩二人とも大好きです」
まっすぐに見つめて、伝える。
「ありがとう、私も好きよ。」
八の字眉先輩が微笑んですぐに返してくれたのに、かしましい先輩は黙ったまま。
「ほら、ね?」
八の字眉先輩が促してようやく口を開く。
「新人歓迎会、世界一楽しいものにするのよ!」
深く息を吸ってから
「はいっ!!」
そう、返事をした。




