星、針、時計
螺鈿の針が私をのせて時を刻む。
文字盤は星、針が指すその瞬間にひときわ強く輝く。私の使命は星の願いを叶えること。
チクタク…チクタク…チクタク。
鏡のようにただ目の前のものを写し出す星に
ひんやりとした空気を感じる。落ち着かない気持ちで
望むものを問いかけたが同じ言葉が返ってくるばかり。
困った、これでは私の使命を果たせない。思わず口をついて出た。
なにかがこぼれ落ちた音がしたが確認するより先に針が進む。
チクタク…チクタク…チクタク。
次の星は内側が赤く光っている。
地表が磨りガラスのようなものでおおわれていてごうごうと音が聞こえるほどのエネルギーを持ちながらもその熱を感じることはできない。
ガラスを取り払うお手伝いを申し出たが、変わることは怖いと受け入れてはもらえなかった。相手の了承がなければ魔法は使えない。
チクタク…チクタク…チクタク。
うっそうと木々が繁り、表面を苔に覆い尽くされてる星はでも風1つ吹かない。
たくさんの緑が目に突き刺さるほどその彩度を競っている。
一番美しいこの瞬間でありつづけたいとねだられ時を止めたこの星は今も幸せであり続けているのだろうか?何を望むか問おうにも、星は答える術を持たない。
チクタク…チクタク…チクタク。
水をそのまま球体にしたような星は常に波打っている。
目を凝らせば魚の群れがせわしなく泳いでいる。いくつかの魚をお土産にと持たされる。
何かしてほしいことはないか?と逆に問われてしまう。
いくつもの星を見てきた。
また鏡の星が近づいてくる。
気のりはしなかったが針は止まらない。
近づくにつれて気づいた。
鏡張りでしかなかった星に小さなヒビができている
そこから双葉が顔をのぞかせていた。
聞けば、私の落とし物のせいで割れたのだと言う。
時を戻すこともできる、お詫びにそうさせてほしいと申し出ると、今さら困る。と断られてしまった。
戻すならもっと早くしてほしかったと。
冷たい空気はいっそう居心地が悪くしかし、時計針が進むまではここにいなくてはならない。
ようやく針が進む。
チクタク…チクタク…チクタク。
次の星の変化を恐れながらも私は星をめぐるのをやめられない。




