雪、桜、時間
音もなく積もった花弁が私に不誠実な願いを切望させ、
音もなく積もった雪は否応なく私の進んできた道を無様に見せつけている。
どこにも行かないでと駄々をこね足踏みしたその痕を後に降るであろう雪は隠してくれるだろうか。
離さないでと思わず伸ばした手を気づかれないうちにポケットへ。
積もった花弁が朽ちることなくあり続け、無様に足踏みした痕を雪が消してくれることを同時に願う愚かしさをいつまでも乗り越えられずにいる。
「また明日」の言葉に込めた重さをどうか感じ取られませんように。
「次の約束」を喜ぶ気持ちを悟られませんように。
先の分かれ道を見たくなくて君の前に回り込む。
「今度さー?遊びにいかない?」
「どこへ?」
「どこにしよう?」
「場所によっては拒否する」
「じゃあね!カラオケ!」
「音痴なのをわかってて言うてるな?」
「あっ!!」
「わざとらしすぎだろ」
「うーん、じゃあ今夜連絡するー!」
「はいはい」
連絡1つ、君の許可がないとできないのを知らないままで。
「じゃ!またな」
と手をふったあなたはそのまま電話を掛ける。
君の好きな人が君を好きになったら……。
どうにもならない思いを長い息に変えて追い出した。




