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短編集  作者: まさるしー
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クジラ、イルカ、海底

深碧の海の底。潮の流れが緩やかなこの海では時折上がる気泡が時を刻む。

薄墨色に光る小魚がサァーッと光を掻き分けて、砂にコインが1枚落ちた。

小魚を追いかけていたイルカがそれをくわえて秘密基地に持っていく。


珊瑚の隙間にそっとコインを置く。

躍動感あるヒレに大きな口、潮を噴き海を優雅に泳ぐクジラの彫刻をしばらく見つめ、小魚を追いかけに戻る。


珊瑚の隙間からカニが出てきてコインにぶつかり、よろけた。

抗議をするように振り上げた爪がぶつかりコインが転がり落ちた。

海底へと光を受け、キラリ、キラリとおりてゆく。

コインにぶつかったホタルイカが驚き、怒りを現すかのように耳を震わせるがコインはすでにない。

音もなく静かにたどり着いた深海。

案黒色に目を凝らすと仄かな光。

アンコウが静かに獲物を待っている。

なにも見えないこの場所で、時折聞こえる気泡の時に身を委ねる。


海の物は誰も知ろうはずもないが、

地上ではこのコインのために多くの血が流れた。

クジラの彫刻に込めたられた人の幸福を祈る思いは呪いにかわり、自らの幸福さえも奪うほどになった。


誰がコインを解き放ったのか、それはまた別のお話。

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