君 桜 思2
君がまたお別れだの、寂しいだの、このままがいいだのと騒ぎ出した。
桜の開花どころか今は梅さえもまだ固い蕾のまま。
思わずこぼしたため息に君が身構える。
あぁ、これを言ってはダメだ。ダメだ。
「あのさ?本当は別れが楽しみなんだろう?」
心で天をあおぐ自分を無視して口がつづける。
「なんかイベントが起きる度にそんな風に言ってさ?」
君の事なら僕はわかっている。欲しがっているのはこんな言葉じゃない。
「もういい加減に……」
君の瞳から大きな滴がポタポタとこぼれ落ちる。あぁ、イヤだ次にくる言葉は。
「ごめんなさい」
違う、謝ることなんてない、泣かせたのは僕の弱さ。
「いや、毎回それだし。桜の季節に別れたくないなら今にしたら?人生における怖がる時間を減らせるだろう?」
ぼたぼたと滴をこぼすばかりの君に僕の口は追い討ちをかける。
「もう嫌なんだ」
目を見開いた君、走り出そうとするのを腕を引いて制止する。
なにも聞きたくないと逃げる君を抱き締める。
勝手に動く口からようやく主導権を取り戻した俺は、叩かれるのを覚悟して抱き締める。
「なぁ、嫌なんだよ。
いつかくる別れの準備をされたら。今の君の笑顔が見たい僕はどうしたらいい?」
「だって……」
あぁ、知っている永遠を信じられるほど子供じゃない。
変わらぬ関係などないと覚悟を決めることでしか大人になれない僕ら。
こんな風に言ってしまえばいつかはこの言葉が枷になる。わかってたはずなのに。
「ごめん、忘れてくれ」
離したくないと引き裂ける心を黙らせて君の拘束を解く。
あるがままの君が好きで始まった関係を僕のエゴが壊す。




