表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: まさるしー
35/72

君 桜 思2


君がまたお別れだの、寂しいだの、このままがいいだのと騒ぎ出した。

桜の開花どころか今は梅さえもまだ固い蕾のまま。


思わずこぼしたため息に君が身構える。

あぁ、これを言ってはダメだ。ダメだ。

「あのさ?本当は別れが楽しみなんだろう?」

心で天をあおぐ自分を無視して口がつづける。

「なんかイベントが起きる度にそんな風に言ってさ?」

君の事なら僕はわかっている。欲しがっているのはこんな言葉じゃない。

「もういい加減に……」

君の瞳から大きな滴がポタポタとこぼれ落ちる。あぁ、イヤだ次にくる言葉は。

「ごめんなさい」

違う、謝ることなんてない、泣かせたのは僕の弱さ。

「いや、毎回それだし。桜の季節に別れたくないなら今にしたら?人生における怖がる時間を減らせるだろう?」

ぼたぼたと滴をこぼすばかりの君に僕の口は追い討ちをかける。

「もう嫌なんだ」

目を見開いた君、走り出そうとするのを腕を引いて制止する。

なにも聞きたくないと逃げる君を抱き締める。

勝手に動く口からようやく主導権を取り戻した俺は、叩かれるのを覚悟して抱き締める。

「なぁ、嫌なんだよ。

いつかくる別れの準備をされたら。今の君の笑顔が見たい僕はどうしたらいい?」

「だって……」

あぁ、知っている永遠を信じられるほど子供じゃない。

変わらぬ関係などないと覚悟を決めることでしか大人になれない僕ら。

こんな風に言ってしまえばいつかはこの言葉が枷になる。わかってたはずなのに。

「ごめん、忘れてくれ」

離したくないと引き裂ける心を黙らせて君の拘束を解く。

あるがままの君が好きで始まった関係を僕のエゴが壊す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ