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神域、山、水晶2
秋桜と桜が咲き、雪が舞う中で向日葵が揺れる山。
「ナニか来たよ」
「必要ないのに来たね」
「来てほしくないのにな」
「追い出しちゃえ」
バシバシとひまわりの葉が寝ている幼女の頬を叩く。
「ほら出てってよ!」
幼女が起きてなおも攻撃の葉を休めない。
煩わしそうに葉の届かない位置へ距離をとったのち
「……ここは?」
幼女は声の主を探すように視線を走らせながら言った。
「神域の山だよ。貴女は神への供物だよ」
秋桜がゆらゆらと揺れる。
「人間は自分にいかほどの価値をもってもらえてると勘違いしてるのかな」
びゅぅっと雪が幼女の両脇を通り抜ける。
さわさわと桜の樹が揺れ、
「誰もいない。人間はあなた一人」
「……どうすればいい?」
神との意思疏通ができると持たされた水晶をギュッと握って問いかける。
「帰って!!」
向日葵がわっさわさと折れそうな勢いで揺れる。
「どこへ?」
「それを決めてやる必要がどこにあるのかな?」
雪がしんしんと降る。
「お帰りはあちらーーー」
桜の花びらがぐいぐいと背中を押して人の世に送り返す。
神が人の命を欲しがらないことを気づくまで。




