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流、鏡、水2
お気に入りのガラスボウルに水を張る。
さくら色、萌木色、生成色を落とす。
広がった色の波紋に流れを教える。
息を潜めて紙を浮かべる。
1拍おいて一気に引き上げる。
揺れる水面と移された色に思わず笑みがこぼれる。
画用紙が乾くのをまって切りぬきをいくつかいれる。
「これから新しい生活を始めるお祝いに」
渡した包み紙の色合いを誉めてくれる君。
出てきた螺鈿細工の櫛を見て鋤いてくれとねだる君。
日の光を受けてほのかに光るブラウンの髪を注意深くとく。
君のお気に入りのミントの香水がふわりとかおる。
君は気づくだろうか?
鏡文字で切り抜いた僕の想いに。
幸せなこの場面だけを切って大切に箱に閉じ込める。
願わくば宝箱から溢れるくらい君に贈り物がしたい。




