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雨、飴、傘
紫地に黒の縁取り模様の傘をくるくると回す。
飛び散っていく雫を私の嫌な気持ちに見立ててどんどんと飛ばす。
「あーぁ」
お気に入りの靴に雨が染み込んでくる。
……やってしまった。
目頭が熱くなるのをまばたきで押さえる。
「どうせ、何でも持ってる君には分かんないよ!!」
君が一番嫌う言葉を投げつけた帰り道。
ただ、共感してほしかったのだ。いつものように大変だね、あなたは頑張ってるよって。
君の声のトーンがいつもより低いのに気付いてたのに。
「いつもいつも、デキナイばかりを聞かされる身にもなってよ。
私の心配の気持ち、本当に届いてるの?上っ面の言葉だけ持ってくなら別の人に相談してよ。」
君の声が震えていて。もちろん、軽んじてた訳じゃない。本当に心配してくれてるのがわかるから、甘えてた。
コンビニに寄る。新作のキャンディーを見つけて振り返りながらいう。
「これ、君のことだからすでに食べたでしょ?」
誰もいない空間を認識する。
支払いを済ませて出た空に虹がかかる。
新作のキャンディーと一緒に写真を撮り、君に贈る。