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流、鏡、水
あぁ、なんてことだろう。
誰か頼む、頼むから嘘だと言ってくれ。
思えば気づけるチャンスはいくらでもあった
のに。
あなたの声が僕を責める。
「スマホばかり見つめて……取り返しのつかないことになっても知らないよ」
たった数歩前、鏡に写る自分を横目で見て驚いたときになぜ、しまうことができなかったのか。
たったひとつの選択ミスが僕をこの部屋に閉じ込める。
隣の部屋から水の流れる音がする。
誰かの軽やかな足取りが遠ざかっていく。
あぁ、僕をおいていかないでくれ。
かみに見離された男は震えるおしりをさすり途方にくれるばかり。




