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短編集  作者: まさるしー
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シャチ、ペンギン、水族館

「ごめんなさい、待ちました?」

息を切らして君が僕の元へ駆け寄ってくる。

「今来たとこ!!」

なんてベタなデートらしい会話!!と内心でテンションが上がってるのを悟られないようにクールに決める。


手をつないで水族館へ入る。

出迎えてくれるクラゲの群れを見て君が

「なんて幻想的なんでしょう……」

ほぅっとため息をつくから僕は

「中華クラゲって美味しいよね」って言葉を飲み込む。


チンアナゴの群れが奥へと誘う。

「学校の朝礼を思い出すよな。校長の話なげぇーって……」

と僕が言うと、「……あぁ!!確かに!あのいっそう長い子が校長先生でしょうか?」と柔らかく返ってくる。


ペンギンが館内を散歩するというアナウンスを聞き、先を急ぐ。

シオマネキがヘイヘイ!お熱いね二人ぃ!とハサミを振り回してるのに勇気付けられて

「今日のワンピースかわいいね」と君を誉める。

「……惜しいです!!」

君が不満げな顔を見せ、髪を触る。


「さぁ!ペンギンちゃん達が通りますよー!!手を出すとカプリとやられますから、ちゃんと離れてみてくださいねぇ」

飼育員が慣れた様子で声をかける。


「ペンギン……」二人同時に声を出して相手に話を譲ろうとする。

「一番好きな種類っています?」君が聞いてくる。

「えっとね、眉毛が黄色くてとがっててなんか強そうなのがいるでしょ?あれが好き!」

「シュレーターペンギンですかね?私もあのこ好きです。あとマゼランペンギンも。」

目の前をトコトコと歩く白と黒で構成されたこぶりなペンギンを指差す。

「かわいいよなぁ……」

「さっきいいかけてたのなんですか?」

「ん、いやお土産にペンギンのお揃いのものがほしいなぁ……なんて」

「いいですね!」嬉しそうに頷くのにホッとする。


目玉のでかい水槽トンネルの上をシャチが優雅に泳いでゆく。

「でっかい眉毛ですね」

「目を細めて見守ってるみたいだ」

二人揃って目を奪われたまま感想を言う。

一拍の後、「確かに!!」顔を見合わせて笑う。


同じものを見ても感じ方がまるで違う僕ら。

それでも君が僕は好きだから。ペンギンは一度決めたパートナーを生涯変えないという。

お土産の何気ない会話に忍ばせた思いを未来の君と笑い合えるように、少しずつこの距離を縮めていこう。

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