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短編集  作者: まさるしー
13/72

魔法、鳥、肉まん

お昼を買いに出た通りの公園で

「ファイヤー!」

「ふぁいやー!!!!」

「ふぁーいーやーー!」

子供が魔法の練習をしている。

勢いに驚いた鳩がその様子を遠巻きに見ている。

ライターをそっと手渡しする意地悪を思い付いて首を振る。


コンビニで片手で食べられる肉まんを買う。

デスクワークで運動不足を心配した上司が考案してくださった「迷案」

「昼食をなるべく外でとるように!昼休憩は30分なのは固定だけどな!」

嬉しすぎてうっかり頭に乗ってる不自然な毛の塊を引っ張ってやりたくなる。

食べながら通った公園ではやっぱり子供が「ファイヤー!!」とやっている。

自分の中で科学が魔法を塗りつぶしたのはいくつの頃だったか。

見ていることに気づいた子供が、照れ臭そうに頭を下げるので、こちらも下げる。いつかその魔法が完成するといいなぁと口の中で言う。

科学の世界も悪くはないが、魔法が存在した時間は取り戻せない。


1週間ほどそんな子供の練習を見守っていた。自分が通りかかる時間を覚えて、こちらが見つけるより先に駆け寄ってくれるまでになった。

手の中にライターを隠して

「一服したいのでここに放ってくれないか?」なるべく自然に不自然な形でライターを隠した手をタバコの先にセットする。

「ファイヤーー!!」子供が言うのに合わせてライターを点火する。

「ありがとうな!」

素早く手を下ろし、タバコを燻らせる。

「ここ、禁煙ですよ?」

子供の困惑した声が返ってきた。慌ててポケット灰皿を出す。


あぁなんて世知辛い世の中。

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