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短編集  作者: まさるしー
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水、風船、シャボン玉

何もかもがどうでもよくなって公園に行く。

誰かが吹いたシャボン玉が目の前で弾ける。

あぁ、羨ましいなぁ。

空に浮かぶ雲がソフトクリームでもいかが?と提案してくる。

首をふると隣には大福餅の提案。


「こんなことしてる場合じゃないのに」

ボーッとそんなことを考える。

「あーそーぼー!!」

4.5歳くらいだろうか?話しかけられて思わず頷く。

遅れてやってきた母親がペコリと頭を下げる。

「これはご飯ー、これはね、お肉!!」

小石や砂や木の実や小枝を座ってるベンチに次々と置かれる。

「おいしい!」大袈裟に反応を返してやると嬉しそうな顔をする。


あぁ、こういうことなんだよなぁ。

自分のしたことを喜んでもらえたら嬉しくて。

いつのまにか覚えた愛想笑いの便利さになれて。

愛想笑いを投げたら返ってくるのは愛想笑いに決まっているのにそれじゃ嫌で。


子供がよたよたと水道の水を運んでいるのを見ていると、バッシャン。派手な音をたてて転ぶ。

泣き出しそうな子にお母さんが「帰って着替えようか」と優しく声をかける。

バイバイと見送りながらそんな単純なことさえサボっていた自分に気づく。

転んで濡れた服は気持ち悪いが、着替えれば些細なこと。転んだことを認めずに意地をはって汚れたままの服で不機嫌に座り込む自分のなんて幼いことか。


スマホを取り出して連絡をいれる。

「先日の失態について、お話をする機会をいただければありがたいです。」


「あっ!!!」

突然聞こえた声に振り替えると赤い風船がひとつ空に吸い込まれていくところだった。

割れずにたどり着けるだろうか、自分の手元を離れた言葉がどういう形で届くのか怖いが願わくば。

そわそわと公園のベンチの周りを歩く。

返事を知らせる音がなる。

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