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目覚め。  作者: 深見和希
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目覚め。

過去は忘れたい。

恥ずかしいとか、そういうものではなく

恐ろしかったためだ。

・・・俺は今も忘れない。

いや、忘れられない・・・と言った方が良いだろうか?






そうだ。あれは二年前の穏やかな春の日だった。

俺は某企業に勤務していたが、これがひどいブラック企業だった。

休みなんぞ、全然無かった。

で、俺には妻と娘が一人居た。

家に帰ると深夜0時をまわっていたから、

妻と娘は先に寝ていた。

その寝顔は幸福そうで、俺はそれを見てまた仕事を頑張ろうと

思えたんだ。

そして、だ。

ある日、またいつもと同じ様に帰宅すると郵便受けに、

何か入っていた。

妻宛のものかもしれないと俺はそれを取り出し、家の中へ

持ち帰った。

電気に照らして見ると、それはどこにでも売っているような

茶色の封筒で、俺宛のものだった。

中身を取り出すと手紙と写真が数枚入っていた。

写真は・・・なんと俺と妻ではない女が性交している真っ最中の

ものだった。

合成か、と疑った。

他の女とヤったことなどなかったからな。

そして手紙の方を見た。

ここはうろ覚えなんだが、


私は全てを知っています。

奥さんと別れてくれないと、写真をばら撒きます。


みたいなことが書いてあったんだよ。

最初は、子供の悪戯かと思っていたが

その次の日もそのまた次の日も来るんだ。

そして、日に日に手紙の内容がひどくなっていくんだ。

翌日は


貴方は私のものですよ。


って一文だけ。

誰かは知らないが、やめてくれと思った。

でも来るものは来るんだ。

そのまた翌日には、


何で離婚しないの?何で?

私と結婚してよ。


って書いてあった。怖くなった。

でも封筒の投函が止まることはなかった。

これは、悪戯じゃないと俺は確信した。

警察に相談しようか迷ったが、妻に写真の事がバレるのは

確実だ。

でも解決方法はある。

単純に我慢だ。俺が我慢すれば良いのだ。

だが、それが甘かった。

俺は封筒のせいで精神的に辛くなっていった。

そしてある日、珍しく休みが取れたから

妻と娘を連れて遊園地へ行った。

ジェットコースターや観覧車など沢山の

乗り物に乗ったが、やはり封筒の事が頭から離れなかった。

やがて、妻が俺の顔から何かを察したのか俺に聞いてきた。

「何かあったの?深刻そうだけど?」

「いや、何もないよ。気にしないでくれ」

その場は何とか誤魔化してしのいだ。

正直に言えば、相談したいところだが

俺は離婚したくない。

それだけは避けたい。

だが、バレるのも時間の問題だろう。

俺は結局、遊園地を楽しむことができなかった。

そして家へ帰ってくると、郵便受けにまた封筒が入っていた。

俺はそれを手に取って中身を見て驚愕した。

小学校へ登校する娘を盗撮した写真が、数枚入っていて

手紙に


貴方の娘さん、可愛いですね。


とだけ。

俺は完全に恐怖していた。

このまま無視して我慢すれば・・・命も危うい。

最悪、家まで殺しに来るかもしれない。

でも、警察に相談すると離婚という最悪の結末が待っている。

その時、背後から声がした。

娘の声だ。

「パパ、すっごく汗かいてるよ。どうしたの?」

「あぁ、パパは汗っかきなんだ」

この場も何とか切り抜けた。

しかし、愛する妻と娘を騙した罪悪感が湧いてきて、

心が痛んだ。

家へ入って、何か策を考えた。

そして良いアイデアが浮かんできたんだ。

同僚の地蔵堂岳彦に相談をするのだ。アイツなら適切な

アドバイスをくれるかもしれない、と俺は考えたのだ。

トイレへ入って鍵を閉め、電話を掛けた。

そいつは割と早くに電話に出た。

「おぅ、どうした?」

「実はな、相談があるんだ」

「何だ?」

「実は…」

俺は事のあらましを説明した。

だが、それはもう諦めて警察に言えとしか

言ってくれなかった。

再びふり出しへ戻ってしまった。

俺は気を少し紛らわす











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